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destruction
【サイコ その他小説】

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destruction-1

俺は狂っているのだろうか……
もし狂っているとすれば一体何時から……


赤く腫れた右拳。
ついさっきも二人、“壊した”ところだ。これで今夜は五人。

餌は簡単に釣れる。制服のボタンを一番上まで留めて繁華街を歩けば、ものの数分で引っ掛かるのだ。路地裏でも駐車場でもいい。素直に餌についていき、そこで“壊す”

恐怖に歪む顔。
それを叩き潰す快感。
そうして今日も安眠を得る事が出来る。


破壊衝動。月に一度、何の前触れもなく突然沸き起こってくるそれ。何かを無性に壊したくなって、そうなれば落ち着いて眠ることも出来ない。


始めはおもちゃだった。
美しい造型のプラモデルを叩き潰す。
作り上げる事よりも壊す事の方が断然愉しくて、新しい物が手に入る度、ゆっくり組み立ててから一思いに壊した。


小学生高学年になると昆虫になった。
羽をもぎとり、足を引き抜く。
プラモデルとは違う有機的な反応が愉しくて、日が暮れるまで野原を駆け回り、捕まえた虫をその日のうちに壊した。


中学生になると興味は動物に移った。
腹を蹴飛ばし、頭を踏み付ける。
虫よりも確かな反応が欲しくて、河川敷に捨てられた子猫を拾い、近所の公園で鳴き声を愉しみながら壊した。


高校生になって対象はヒトになった。
顔を、体を、精神を破壊する。
プラモデルには無かったじっくりと潰す快感を得るために、虫には無かった肉の柔らかさや骨の硬さを感じ、猫には無かった恐怖と苦痛に歪む表情を愉しみながら壊す。


俺は狂っているのだろうか……
もし狂っているとすれば一体何時から……
いや、俺は狂ってはいない。
生きるために不可欠な睡眠。
睡眠を得るために必要な破壊。
ならばこれは生きるために必要不可欠な破壊。
だから俺は狂っていないはずだ。

やっと落ち着いてきた。今夜は五人。いつもよりも少し多い。まあ、こんな日もたまにはあるだろう。

一つ息をついて、空を見上げる。妖しく光る月がそこにあった。もっと壊せ、そう言っているように見える。残念だけど今夜はもう十分だ。睡魔が少しずつ意識を侵してくる。月にさよならを告げ、家へと歩く。
今夜もゆっくり眠れそうだ。


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