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そして16年目の恋模様(クラス1-AB)
【女性向け 官能小説】

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千尋の誘惑-4

鼻腔を擽る女体の香りに、オレの自制心が吹っ飛びそうになった。しかし、千尋の目から逃れたことにより、病室での慎吾の表情を思い浮かべることが叶った。辛うじて踏み留まることができたオレは、自制心を絞り出して、柔らかな女体を強引に引き剥がした。

「だめだ!これ以上こんなことを続けるなら、この家から出て行ってもらう」

「い、いや…」

それでも千尋はオレに縋りついてきた。もう限界だった。オレにはこれ以上自制心を保つ自信が無かった。

オレは再び千尋の体を引き剥がすと、そのまま浴室の壁にドンと女体を押し付けた。衝撃で揺れるバストを見ないようにして、驚いた表情をした千尋の耳元で怒鳴った。

「いい加減にしろ!何を勘違いしてるかしらないが、オレは昔からお前の父親みたいなもんだろ!娘のようなお前を抱くことも、結婚することも金輪際ない!」

怒声がガンガン浴室に反響し、自分でもその声の大きさに驚いた。その怒声をモロに浴びた千尋の怯えた目から、見る見る内に涙が溢れてきた。

これは泣き虫だった子供の頃の千尋の泣き顔だった。過去に存在したこの泣き顔を慰める者は、今はこの場には居ない。

「いいか、こうなったら、お前と同じ屋根の下では暮らせない。オレが出掛けている間に荷物を纏めておけ」

さっきまでの強さが消えた千尋の目を睨みつけ、オレは追い打ちを掛けた。

「ど、どこに行くの…」

縋るように千尋が湿った声で聞いた。

「お前のじいさんの家だ。お前を引き取って貰うように今から行って頼んでくる」

「おじいさん…」

知子の葬式の時に、千尋は祖父母に会っていた。しかし、焼香を済ますと、慎吾は元より千尋にも声も掛けずに、苦虫を噛み潰した表情の千尋の祖父はさっさと帰ってしまった。祖母は慌てて頭を下げて、その祖父の後を申し訳なさそうに付いて行ったがそれっきりだ。千尋にとって祖父母は、近所の人たち以上に他人だった。

「ああ、慎吾が退院するまで、じいさんの所に居ろ。そこに送った後は、2度と千尋と会うことはない」

オレは自分の決意を口にした。でないと一線を超えそうで怖かった。

「いやああああああ」

千尋は顔を覆って、泣き崩れた。

少し前なら、千尋が泣いていたら、直ぐに飛んで行って慰めていただろう。しかし、今のオレはその千尋の泣き声から逃れるように浴室を出ていった。

「愛してるのに…愛してるのに…」

オレの背中に千尋の声が追い掛けてきた。それをストレートに口にできる若さを苦々しく思い、湿った体を拭くのももどかしく、自室に戻って外出着に着替えた。

外出するには浴室の横を通らなければならない。オレは玄関に向かう途中、浴室で啜り泣く千尋に向かって、もう一度念を押した。

「じいさんと話しが付いたら、今夜にでも行って貰うから準備しとけよ!」

「いやああああっ!」

オレの怒鳴り声に対して、号泣が返ってきた。


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