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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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白雪の問題=憲の問題-6

「……でも、なんで会って断ってたんだ?」
手を離した後、憲が聞いてきた。
「だって、ラブレター書くのって、結構勇気のいる事なんだぞ」
「経験者は語るか」
「まぁな。……そんな勇気のいる物を送ってまで寄せてくれる想いには、例え断るのにも誠実さがいるだろう」
「……フフッ、そうか」
「そうなんだ」
静かに笑い合って、またゆっくりとした沈黙が流れた。さっきと違って、心地いい沈黙だ。
………む?
「憲、どうした?何か言いたいのなら、言ってくれ」
憲の雰囲気がちょっとだけ変わった事を、アタシは見逃さなかった。憲の事なら、アタシの洞察力はホームズ並だぞ、。
「………うん。じゃあ、言わせてもらうよ。ずっと言わなかった本心……みたいなもんだ。病人の世迷言だけど」
「……なんだ?」
「……白雪、誰も見ないで欲しい」
え……?
「俺だけを見ていて。誰も見ないで欲しい。誰とも話しをしないで欲しい……。俺だけの白雪でいてほしい」
「……憲」
「……ゴメン。でも、無性に言いたくなった」
「謝らないで。大丈夫、アタシは憲だけのものだ」
「……じゃあ、ラブレターの差出人とは……もう会って返事しないでくれ」
「わかった」
そういうと、憲は安心した様に目を閉じた。しばらくして、ゆっくりとした寝息を立て始めた。
おやすみ、憲。
いい夢を……。


次の日は雨だった。でも、アタシの心は晴れ!
降水確率0%の清々しい精神状態だ。
憲の家へと、アタシは赤い傘をさして歩く。鞄と一緒に憲が『捨てた』青い傘を持って。
アタシは晴れた日が好きだ。
でも、ちょっとぐらいは雨も好きになれそうだ。
そんな気分だった。


アタシ達が仲良く登校してきた教室は異様な盛り上がりだった。どうも、既に全員がいるようだ。
「「?」」
二人合わせて首を傾げつつ、ドアに手をかけようとした時に、ある声が聞こえてきた。
『俺だけを見ていて。……』
こ、これは、昨日の憲の声……。
そっと憲の表情を……ひっ!?
い、いかん。これはヤバイ……。聞いていた憲の『キレた』時の表情だった。
つまりは……無表情。
ゆっくりと憲はドアを開けた。
「……そんな面白いテープ、どうやって録音したんだ?」
「どうやって、って」待ってました、とばかりに憲に気付かない愚かな高坂は自供しだした。
「実はな、憲のお姉さんに頼んで、お姉さんの部屋から『壁にコップ』作戦を使って、録音したのさ!!あ、何ならもっかい聞くか?」
ノリノリの高坂はまったく気付かずに本人へ聞いた。
「……やってみろ」
うわ、また低くなった。哀れ高坂。やっぱりお前はそういうキャラという運命らしいな。
「よし、じゃあスイッチON!!」
氷つきそうな殺気を出す憲に、クラス中が高坂の冥福を祈っているようだ。中には目を瞑っているのもいるな。
『い』ドカッ!!!
『行かないで』の最初の『い』が発音されたと同時に高坂が操作していたラジカセに傘が生えた。いや、刺さった。
憲が投げたのだ。幾ら先っぽが金属製だからって、刺さるか…普通。
「け、けけけ憲!?これは誤解だ!これはだな、お前らの破局説をしっかり一掃するために、俺が身を粉にしてお前らのラブトークを……」
憲は必死に言い訳する高坂をしり目に床に落ちたラジカセから傘を引っこ抜いた。ラジカセはどうもさっきのが致命傷だったらしく、弱々しく『い』をリピートしている。


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