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Mirage
【純愛 恋愛小説】

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Mirage〜2nd Emotion〜-10

クリスマスソングも鈴の音も、すべてが僕の耳に白々しく鳴り響く。

僕は、嗤い続けた。

嗤いながら、銀の雫を一滴だけ頬の上を滑らせた。

「‥‥ってまぁ、こんなとこやな」
筑波は何かを考え込むように、片膝を抱えた体勢のまま俯いて身体を揺すっていた。
「すまんな、退屈やったろ?」
僕がぽんと肩を叩くと、彼女はゆっくりと頭を上げた。
「こんな話を今する、ってことは、昨日のことに、何か関係あるんやね?」
やっぱり気付いたか。まぁ下手に慰めの言葉を吐かれるよりはいくらかマシか。
「まぁ、そこは想像に任すわ」
惚けてみてもバレていることぐらいわかっている。その証拠に、彼女の目は、まっすぐに僕を捉らえている。僕の安っぽい偽りの衣を破り、真実を見抜く強い光が、そこにはある。
「‥‥言いたくないなら、いいけど」
筑波は膝をフローリングにつけつつ、僕に近づく。
「でも、やっとわかった」
僕と彼女の距離は、もはやゼロに等しい。
「そんなことがあったから、神崎くんは自分の周りに線引いて、誰もそこに入れようとせぇへんねやな」
僕は焦燥感を押し殺したが、続ける言葉を失い、無表情のまま黙り込んだ。
7畳ある僕の部屋は、沈黙に支配される。僕が言葉に窮しているように、彼女もまた、自分の吐くべきセリフを脳内で模索しているように見えた。
「‥‥せやな」
その静寂を打ち破ったのは僕。思いがけず、室内にその3文字が大きく響く。
「そうなんかも、しれへんな‥‥」
僕は思わず自嘲気味に笑った。
「失いたくないから、どうせ失うなら、いらん。はは、三文ドラマやな、俺」
そこまで言って、もう一度ははは、と笑う。自分でも驚くくらい、渇いた笑い声。
惨め。そんな言葉が似つかわしい。もう僕には失うものなど何もない。極めてネガティブな意味合いで。
「あんな」
筑波が口を開く。
「うちは、幸妃の気持ちは想像でしかわからへん。でも、うちは、うちやったら‥‥」
そこで彼女は言葉を切り、逡巡するように僕から目を逸らす。けれどほんの数秒で僕へと視線を戻した。
「うちやったら、多分寂しいと思うな」
その言葉通り、彼女の声色には一抹の寂寥感が包含されていた。
「誰も信じられへん、ってことは、喜びも、悲しみも、寂しさも、分け合うことも出来ひんってことやんな? それって、寂しいよな? それに‥‥」
筑波の言葉の波は止まらない。
「頼ってもらえへん方も、寂しい」
僕は、そう言う筑波を初めて怖いと思った。何故かは、よくわからないけど。
「一緒に考えよ? うちじゃなくてもええよ。千夏ちゃんとか、周ちゃんとかと一緒に。みんな、心配やねんで?」
彼女の言葉の中に、押し殺された強さ。喉から搾り出すようなその声に、僕は押し黙る。



──心配、か。



心の中だけで呟く。

僕は、心の中に今までとは違う風が吹くのを感じた。そして僕には他人に心配されるだけの人望もあるのだと、少し嬉しいような、むず痒い感覚を覚えた。‥‥尤も、勘違いだと言われればそれまでなのだが。
「えへへ」
筑波ははにかんだ笑みを浮かべている。僕はそれが意味することの意味がわからず、眉を寄せる。


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