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最速の翼
【戦争 その他小説】

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第四話 靖国への誘導-3

 損害を受けながらも敵艦隊は煙幕弾を発射して航行を続ける。彩雲は傷ついた敵艦隊に背を向けて、帰路へ就いた。護衛の零戦は四機とも無事で、翼を振りながらマバラカットの方へ帰って行った。清水は整理した戦果を基地へ打電する。
『空母、巡洋艦、各一撃破、駆逐艦二撃破』
『了解』 
 すぐに返信が帰ってきた。その返信を二人に伝えると、すぐに清水は顔を伏せて声を殺して泣きだした。今まで堪えていた涙がついにあふれ出したのだ。西川が声を掛けようとしてが、そっとしておいた方がよい、と森口に言われて思いとどまった。
 誰も喋らない静かなコクピット内で、清水の嗚咽だけが小さく響いていた。


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