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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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手島の経歴-4

悠子と雄一の引き取り手が有ればよかったかもしれないが、しかし、両親とも家族の縁が薄く、唯一居る遠い親族は2人を引き取る余裕は無かった。

家族関係に5,6年の熟成期間を経た後の父親の他界ならば、以降の関係性もまだマシだったかもしれない。

勿論新しい母親に非が有るわけでは無い。突然の悲劇を受けて、他界した夫の連れ子の事まで気を回す余裕などあるはずは無かった。当然にして家庭内はギクシャクしだした。

血縁の無い母娘は、お互いに衝突する事で傷ついて泣き、夜になれば傷つけた相手に対する申し訳無さで泣いた。

元々の資質により、家族間の衝突を回避するために、悠子は抗わずにそのまま受け入れる弱さを選び、雄一はその姉を守るために抗う強さを身に付けていったのだ。

姉を守るために雄一が武道を習い始めたのはこの頃だった。




或る日の休日の事。陽子と一緒に試験勉強するために、悠子が初めて各務家を訪問した時にも、当然のように雄一は付いてきた。

陽子の部屋に案内される途中の廊下で、星司と出会った。

「おっ!手島の弟か?手島も大変だな。試験前なのに弟の子守りか」

星司の言葉に、悠子と陽子が揃って目を瞑った。その直後、雄一の放った蹴りを受けた星司の太ももに激痛が走った。さすがの星司も、小学生相手には油断していた。

「きゃあああ、なんて事するのよ!バカ――!」

姉の言葉にハッとした雄一だったが、後の祭りだった。普段の雄一だったら、いきなり蹴る事は流石にしない。しかし、姉と同年代の男の突然の登場に、多少の動顛があったようだ。

「いってえええ」

太ももを抑えて蹲る星司に向かって、雄一が言った。

「ふん、小さいと思ってバカにするなよ!お前の背なんか直ぐに追い抜いてやるからな!」

「バカ!各務くん大丈夫?」

「いいのいいの。星司が悪いのよ。さっ、こんなデリカシーの無い奴は放っといて、あたしの部屋に行くわよ。おいで雄ちゃん」

オロオロする悠子に、陽子は気にするなと言って、さっさと自分の部屋に足を向けた。雄一も後に続いたので、後ろ髪を引かれながら、悠子は陽子の後を追った。

「各務くん、ごめんね」

後ろを振り向いて悠子が言った言葉に対して、星司は『大丈夫』という風に手を上げて応えた。




『手島』『各務くん』

2人のこの関係性が『悠子』『星司くん』になるのには、そんなに時間は掛らなかった。悠子と陽子が仲良くなるに連れて、悠子と星司の関係が急速に近づく事になったのだ。

「オレは認めないぞ!姉ちゃんと付き合いたかったら、オレと勝負しろ!」

悠子と付き合いが始まって間もない頃、星司は雄一に呼び出された。

雄一の姉を思う気持ちが星司には手に取るようにわかった。いい加減な態度で対応ができないほど、雄一の思いの強さは大きかった。

「わかった。オレが勝ったら、お前の姉ちゃんと付き合うぞ」

星司も相手が子供だとは思わないようにした。

この頃の雄一は、相手が体格の勝る中学生であろうと敵ではなかった。相手の星司は一見して優男に見えたので、雄一は慢心していた。しかし、幾ら素晴らしい才能が有っても、相手の行動を読める星司には全く通用しなかった。


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