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由美子の母孝行
【その他 官能小説】

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由美子の母孝行-1

1.
 皇居のお堀、千鳥が渕から桜だよりが聞かれる頃になった。由美子のシドニー転勤は、転勤後の今住んでいる家の貸し出しなどに手間取って、遅れていた。

 待ちかねたシドニーの秋山博は、年次休暇を利用して、由美子を追うように上京した。
 
 博がイーメールでそのこと由美子に伝えると、折り返し写真添付で返事がきた。由美子の喜ぶ顔が、ディスプレイから飛び出すように躍って見える。
 是非家に泊まって呉れるように、母からもくれぐれもよろしくと書いてあった。母も認めているから、遠慮しないで家に泊まった下さいと言うつもりであろう。

 最近の円高で、東京のホテル代の高さに音を上げていた博には、有り難い申し入れであった。久しぶりに会う由美子と一つ屋根の下に寝る思うと、胸がときめいた。

 母が夜は外に出たがらないと由美子が言うので、揃って家で夕食を取ることにした。由美子は会社を休んで、夕食の支度に精を出したらしい。

 博が勧められるままに風呂を浴びて出てくると、最近の娘には珍しく食卓にはまともなものが並んでいた。母親と生活を一緒にしているせいで、色々と教わるのであろう。

「由美子さん、赤が好きだって言ってたから」
 博は、ボストンバックから、土産のキャセグレインの特製ワインを取り出した。
「母も最近は、夕食に赤ワイン飲むようになったのよ」
 コルクに栓抜きの錐を突き立てながら、由美子が博に声をかける。

「そうですか。このワインはマイルドで口当たりが良いから、丁度良かった」
 博は先ず自分のグラスに一寸ついで味見をしてから、も一つのグラスに注いで母の耀子に勧めた。

「博さんも、随分と親孝行でいらしたのでしょう。感じで分かりますよ。自分の娘ながら由美子がとてもよくしてくれるので、有り難いと思っているんですよ」
 耀子はグラスに口を付けながら、ぼそぼそとつぶやいた。

「私は両親とも早くに亡くしたので、何も出来なかったんですけれど、由美子さんの親思いには本当に感心しているんです」
「早くいいお婿さん見つけて、孫の顔でも見たいと思っていたんですけれどね、最近は由美子さえ幸せならそれでいいと思っています。博さん、よろしくお願いしますね」
「はあ」
博には、それ以上の言葉が出せなかった。

 さしさわりの無い世間話から、政府の少子高齢化対策の無策ぶりにと話が弾み、食事は和やかな雰囲気に包まれた。母親に娘夫婦の団欒、皆の頭にはそんなイメージが沸々としていた。

「博さん、お疲れだからお床の用意をね、由美子」
 紅茶がすんで一息付くと、耀子が由美子に耳打ちした。
 由美子に導かれて博は、廊下伝いに由美子の後に続いた。今時の東京には珍しくなった、障子と襖の木造の家である。

 廊下から襖を開けると、由美子は博を部屋の中に導いた。
 既に床はのべてあった。

「会いたかったわ」
 後ろ手に襖を閉じると、由美子は博の胸の顔を埋めた。
「由美子さん」
 博は髪の毛に手を差し入れ、肩を抱くと由美子の身体を包み込んだ。
 しばし、お互いの身体を確かめ合うと、由美子は顔を上げた。軽く開いた唇に、博は自分の唇を重ねた。
「うふぅんん」
 由美子は耐えられぬそぶりで身体を捩じる。博も腰に廻した手で由美子を引き寄せると、股間を由美子に押し付けた。
「襖の向こうが私の部屋よ、後で来て…」

 由美子は隣の襖に近づくと、取っ手を引いた。そこはいかにも女性の部屋らしく、鏡台や人形ケースが調度されて、赤い花柄の布団がふんわりと部屋の真ん中を占領している。
「うん、後で…」
 博がうなずくと、由美子は博の手を握り締めて部屋を出ていった。




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