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白色金 (white gold)
【ファンタジー 官能小説】

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白金の乙女-1


   《それは何の前触れも無く、突然舞い降りてきた》
少なくても、僕にはそう思えた。
中学三年の二学期始まりと同時、タイミング的にはまさに夏休み明けの初日。

もちろんアイドル並みにずば抜けた美少女と言う訳では無く、それは正確に表現するなれば“万人受けするタイプ”では無いと言えた。

その容姿や後々知って行く性格や能力値の高さは、まるで平面世界から抜け出して来たヒロインの様であった。
そんな“転校生”に、平凡な“僕”は一目で惹かれた。
もちろん他の男子生徒たちも、全てでは無いがその魅力に引き寄せられていた。
しかしそれも長くは続かなかった。

何故なら彼女には、性格的に少々“難”があったからだ。
その“難”は、容姿よりも感じられた“お姫様”気質と言えた。
内外面共に言える能力値の高さは、文字通り本人の自覚するところで、それは同性からみても取っ付き難く、ややもすれば嫌な感じさえする見えないバリヤーを張っていた。

 かく言う“僕”は、まさにこの“スーパー転校生”と対極に位置する存在と言えた。
容姿を含め学力、運動能力全てにおいて可も無く不可も無く、特長の無い事が特徴であった。
そんな全く特徴の無い僕にとって、転校生は“難有の性格”も含め憧れの彼女と言えた。
もっとも平凡な僕と憧れの彼女がお近付きになれる訳も無く、中学卒業まで日々は過ぎ去っていく事になる。

   《憧れていた》
この時の僕には彼女が、光り輝く“白金の乙女”に見えていた。
くわえて言うならその“能力値の差故”進学を希望する志望校も異なり、憧れは憧れのまま終わるはずであった。



   春

 高校の入学式を終え、僕の心は躍った。
それは憧れの彼女と同じ高校に入学出来たからにほかならない。
もっともそれは僕自身が努力の末に、奇跡的に憧れの彼女と同じ高校に入学出来た様な漫画的なものでは無く、彼女自身の受験失敗によるひどく現実的なものであった。

しかし偶然でありながら一学年四クラス編成のところ、同じクラスになれたのは奇跡的であると思えた。
それでも彼女との距離が中学時代と比べ縮まった訳も無く、平凡な僕にとってまさに“高嶺の花”である事に変わりはない。

そして彼女は相変わらず、余所余所しく気難しい。
それは同性のクラスメイトと挨拶を交わしているところを観察していても容易に窺える。

日々、彼女から立ち昇る“こんなはずじゃなかったオーラ”を感じずにはいられないからだ。
もっともそれは、彼女をストーカーばりに観察し続けた賜物で、他のクラスメイトから見れば気が付く事も無い感情の揺らぎである。

背は高からず低からず、大きな瞳に腰丈まである黒髪は美しい。
彼女自身からも、“私って綺麗でしょ”的オーラがそこはかとなく漂う。
結果、中学時代同様クラス男子の注目は、日が経つにつれ難有の魅力から薄らいでいく。

   《あやか》
そんなあだ名が囁かれはじめる。
因みに“あやか”の語源は、某アニメのヒロイン綾波とアスカの造語らしい。
いずれにしても彼女は、入学数週間でクラス男子から好意的で無い“あだ名”を付けられる。
確かに彼女に対する悪意あるあだ名はおおよそ的を得ていた。
澄まし顔で何でも熟す容姿端麗な少女は、二人のヒロインを足して2で割った感じである。
おまけにアニメ同様、見えない心の壁のおまけつきである。
彼女に好意を寄せる身として、競争相手が減る事は有り難いが、距離が縮まらない事に変わりはなかった。


(綺麗な顔してるなぁ……)
授業中気付かれないよう、細心の注意を払い彼女の横顔をチラ見する。

今日も僕は、“白金の乙女”に夢中である。


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