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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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5.つきやあらぬ-3

「ウソ付け足さないで」
 嘘ではないので紅美子の反駁の力が弱かったのを察知した紗友美は顔はニヤリとしたが、敢えて何も言わなかった。
「じゃ、二人の思い出の場所は、長谷さんの部屋、ってことですかね」
「ま、まあ、そうなんじゃん?」
「そっかー、部屋かー……」紗友美はボールペンで頭を掻き、「ちょっとインスピレーション湧いてこないなぁ」
「そんなムリしなくていいよ?」
「他にないですか? 思い出の場所。告白した場所とか」
 徹は紅美子の方を向いて、
「それもクミちゃんの家だね」
 と真顔で言った。
「そ、そうだね」
「……じゃ、初エッチの場所とか」
「それも――」
「おいっ!」
 紅美子は徹の肩を掴んだが遅かった。「……それ絶対、結婚式には関係ない!」
「徹さんは素直ですねぇ。何でも聞けそう。……長谷さんのこと、好きですか?」
 徹は紗友美の方を向いた。相変わらずの真顔。
「好きです」
「即答ですね。どこが好きです?」
「全部です」
「全部? 長谷さんだって人間ですから、出るモノ出るし、出すモノ出しますよ?」
「私、光本さんの前で何も出したこと無いけど?」
 紅美子が徹の肩をどけて紗友美の前に顔を出した。紗友美は紅美子の背後を覗きこむようにして、
「それでも好きですか?」
 と問うと、徹は、はい、と平然と答えた。徹が答えれば答えるほど、紗友美の前で顔が赤くなっていく。
 ――そして、自分を省みて、胸が締め付けられていった。
「なーんかムカついてきた。尋問のレベルをあげます。……丸裸にしてやる」
 それからも紗友美の質問は続き、徹はその一つ一つに誠意を持って真面目に答えていた。中には真面目に答える必要もない質問もあったのに。
 紗友美が漸く満足した時には二時間近く経っていた。
「……そろそろ、私、オジャマです?」
「いや、そんなことないですよ」
 徹が言うのを押しのけ、
「邪魔。早く二人きりになりたい」
 紅美子は紗友美の聞き取りの間、何を言ってもずっと無視されていたから、わざとそう言ってやった。「ね? 徹」
「え、あ……、うん」
「二人きりになって何するんですか?」
 紅美子は冷め切った紅茶の最後の一口を飲み干し、テーブルを鳴らして置く。
「……決まってるじゃん?」
 もう結婚するし、遠距離恋愛だということは紗友美も知っているし、いいや。徹が何を聞かれても真面目に答えていた、その内容が紅美子に対する恋情に溢れたものばかりだったから、紗友美の目の前で顔を緩めてしまいそうで、暴れたくなるほど照れくさかった。
「長谷さんにしては、オープンですね」
「そうなの。早く解放されて、ニャン、て言いたいから」
「そういうことなら、追いてっていいですか?」
「ぜっ……、たいにダメ」
 紗友美がニッコリとして、
「クミちゃん、恥かしかったんですねー?」
 と言うと、
「……徹、いくよ」
 紅美子は立ち上がって、レシートを持った。
「じゃ、もう後は思う存分どうぞ」
「そうします」
 と言って、徹と手を繋ぐ後ろ姿まで見せてやって店を後にした。
「――なんつーとこ見せちゃったんだろ、私」
 苦笑いしている紅美子に徹がキスをしてくる。
「人前であんなこと言うなんて珍しいね」
 唇と舌の撥ねる音をお互いの口内に響かせた。徹が紅美子の腰を摩さぐり、サーキュラースカートからブラウスを引き出すと、裾から中に手を忍び込ませてウエストの素肌を撫でてくる。
「んっ……、だって。徹が何でもかんでも答えちゃうんだもん。恥しい」
「なんで恥しいの? 本当のことだよ?」
「本当のこと、を真面目に答えちゃうのが恥しいのっ……、んっ……、ちょ、ちょっと、徹……」
 徹の手が腰から脇腹へ遡ってきて、ブラウスを捲り上げてバストを揉みほぐしてきていた。いつもはソフトなタッチなのに、今日は欲情をぶつけるように下端から支え、指を開いてバストに指をめり込ませるほど揉んでくる。
「ん……?」


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