投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』から十年後
【二次創作 官能小説】

『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』から十年後の最初へ 『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』から十年後 3 『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』から十年後 5 『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』から十年後の最後へ

そっと眠れる森の美少女のように-2


「九条一(くじょういつき)と神楽坂公人(かぐらざかきみと)は双子の兄弟である」
開口一番みゆきの父親である九条家現当主は、そう俺に言い放った。

『は? ……』
唖然とする俺。

「おっ、お兄様」
たしなめる様な口調のみゆき。

『『『『!!!』』』』
慌てふためく側近たち。

比類なき権力者に対する俺の呆けた態度に周囲は凍りつく。
そんな周囲を余所に当事者は、明瞭かつ明確に真相を語り始める。

唐突に語り始められたひどく現実味の乏しい感覚。
それはまるで対岸の国のおとぎ話の様な、俺にとってそんな感じであった。

今から十五年前九条家に双子の男児が生を受ける。
それが一(いつき)と公人(おれ)らしい?

超権力者の家系にお世継ぎが生まれる事は喜ばしい事ではあるが、九条家におけるそれは代々不吉なものと忌み嫌われていた。

確かに比類なき権力を持つであろうものが、等しく同時に二つ誕生してしまったのである。
将来的に権力闘争が起きるであろう事は、容易に想像される。

有栖川家に等しく遠く鎌倉時代にまでその祖をさかのぼる事が出来る九条家。
その長きに亘る歴史において同様の事が繰り返され……

『人が生きて行く上で備えは常に必要である。その“備え”が必要に……』
目の前の対岸の紳士は躊躇う事無く、極自然にそう口にする。
そして語り始めるのである。

(ふざけるな、俺は道具では無い)
きっとドラマの主人公なら、このシーンでこう言っただろう。
しかし途方も無く現実味の無いその感覚に、俺は薄い笑みを浮かべるのがやっとだった。

正当な一(いつき)に対して、俺が“備え”の存在であった。
そして知りたく無い事実を知って行く事になる。
自分が今まで家族だと思っていた存在が、創られた環境であったと知った。

 そして仮に一(いつき)が健在だったとしても、いずれは何らかの形で俺の存在は九条家に帰する。
それは古き因習に囚われる前当主が没した事により、動き始めたらしい事もそれとなく語られた。

みゆきが偽りの兄である俺と再会を望み仕組んだと思われた“庶民サンプル”は、すでに九条家によって創られたシナリオの一部であったのだ。
みゆきが恵理言い放った事が脳裏を過る。

「具体的には名家の令嬢との婚姻、こちら側の人間になってもらいます」
確かにつじつまは合っている。
事実俺が清華院に“庶民サンプル”として拉致られたのは、一(いつき)が消息を絶つ数ヶ月前からである。

「少し考える時間を頂けませんか?」
その言葉をようやく俺が発せられたのは、再び九条家エアフォースワンが清華院に隣接する飛行場に着陸態勢に入った時であった。
現段階において決して誰にも知られてはならない真実が語られている間、その機体は清華院上空を二時間ほど旋回した後着陸した。

みゆきと二人タラップを降り、清華院校舎までの短い距離を迎えの車で移動している間。
俺の心は現実と虚構の狭間の中にある様に浮遊していた。

「本当のお兄様なのですね」
不意にみゆきが、再確認する様に口にした。
その喜びと悲しみの感情が入り混じるみゆきの言葉が、急激に俺を現実世界に引き戻した。


 俺に与えられた時間は高等部卒業までの残り二年半である。
それは長い様で短くもあり、あたかも自由な選択を与えられ様でもあった。
しかしその実当然ではあったが、幾つかの条件や制限もあった。

清華院女学校在校生の中から高等部卒業までに、未来のパートナーを選び出す。
それが残り二年半を気ままに庶民として過ごす事を許された条件。

もちろんパートナーの同意を得る事は必要不可欠であったが、全ての在校生が対象と言う訳では無かった。
その時点で婚姻が可能な年齢つまり16歳の年齢に達している事だから、今現在中等部二年生以上のお嬢様に限られる。

つまり白亜は対象となりえる……って、なんで俺ほっとしているんだろう?

 それとみゆきはいずれは知れてしまう事と言いながらも、俺が九条家次期当主である事を周囲に知られる事が無い様に注意を受けた。

「全ての人間が九条家に好意的と言う訳でありません。また幾人のお嬢様たちと恋愛を楽しんでもよろしいですが、その後の人間関係つまり他家との関係を損なう事が無い様にご留意下さい。何故なら同年代のお嬢様たちは直接間接を問わず繋がりがあり、いずれ近い将来今とは違った場で顔を合わす事も少なからずございます」
そしてこうも付け加えた。
「仮にお戯れが過ぎて一人のお嬢様を傷付けた事が……」
少なからず浮き足立っていた俺の背中に冷たい物が走る。


『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』から十年後の最初へ 『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』から十年後 3 『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』から十年後 5 『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』から十年後の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前