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新【翼の記憶】
【ファンタジー 恋愛小説】

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異空間の旅・死の国-3

「・・・そんなに私が怖い?」




声に低い笑いを含める冥王。それがまた不気味で、アレスは声のしたほうから顔を逸らそうと力の抜けた体で必死に抗う。幸い、彼の姿は門の裏側にあるらしく・・・彼の持つ大鎌の柄らしきものがわずかに顔を出している程度だった。



(クソッ!!俺がこいつらを守らなきゃいけないってのに!!噂以上の気迫だ!!)



アレスから見えるブラストの背中も凍りついたように動かず、彼も金縛りのあったかのように全身を強張らせていた。


「・・・」



絶望しかけた彼らの様子をみた門番の一人は小さくため息をつくと、ふたりの視界を遮るように立つ。



「・・・マダラ様はどなたにもお会いになりません。どうぞこのまま次の国に行かれるか悠久にお戻りください」


一行の後ろに控えるテトラともう一人の青年が眉間に皺を寄せたまま二人の隣りに立った。



「・・・長居しないほうがいい」


「いくぞ」



と声を掛けると、半ば強引に腕を引っ張り一歩あるきだしたその時・・・



「・・・大魔導師ガーラント・・・ねぇ」



さらに低く呟いた冥王の声にアレスの体中の血液が一瞬にして引いて行き・・・アレスは"心眼の王"に心を読まれているのだとやっと気が付いた。



「・・・まさか心を・・・」



(しかもそれは今じゃない・・・ガーラント先生の事を考えたのはもっと前・・・門が開かれるよりもっと前だった・・・っ!!)




「・・・ご名答。そこにいるのは五人か・・・魔導師が三人に剣士が二人。キュリオ殿からの手紙の内容は・・・」




まるでアレスの心の声と会話するかのように冥王が答えていく。そして数秒の沈黙のあと・・・



「・・・該当者なし。つまらない」




門番の背後から白い手をひらひらと翻すのはおそらく冥王だ。彼は興味を失ったようにそのまま靄の奥へと歩いて行く。揺れる風の流で彼が本当のその場を後にしたことがわかった。



すると門番の一人が冥王の意図を察し、深く頭を下げた。



「書簡の内容は我々には存じ上げませんが、マダラ様の今のお言葉は返答としてふさわしいものかと思われます。どうか貴方がたの王へ我が王の言葉をお伝えください」



「・・・か、かしこまりま・・・した」



まだ震えが止まらぬ唇をやっと動かしたアレスは、冥王の力を疑うことなくその言葉を返答として了承したのだった―――





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