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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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4.月は自ら光らない-15

 口を緩めようとしたその場所に目を向けると、捲り上げられたヒップに対して、スカートの前裾はまだ紅美子の下腹部を覆っていた。「あ、やっ……、ふ、服っ……」
 紅美子は慌ててワンピースの前の裾を自分で捲り上げる。もう下着は間に合わないし、救いようがなく汚してしまっていたから諦める他無かった。ちょろっ、と生暖かい液体が井上の指を伝ってショーツの布地に染みた。
「出ちゃう……」
 自分でスカートを捲ったまま、片手を壁に付き、濁った声を絞り出すと、井上がGスポットを押し上げると同時に絶頂が訪れ、尿道口が完全に緩んだ。井上の指先に弾けながら、捲ったスカートからしぶきを上げ、鏡を汚し、脚を付いた棚の上に垂れ落ちていく。尿道を温水が流れていく開放感は、膣奥から激しく蜜を漏らすエクスタシーを、一段上の高みに押上げてくれた。
 井上が棚に付いていた脚を空中に持ち上げたかと思うと、紅美子の潮や尿が広がっているタイルにスーツが擦れるのも厭わず、体を脚の真下に入れ、開脚している中心でヒクついている花唇をジュルッ、ジュルッと音を立てて啜ってきた。イッたばかりで敏感な、しかも放尿した名残を拭ってもいない場所を吸われて、紅美子は必死にシャワーノズルに掴まって身を仰け反らせる。
「ダメッ……、き、きたないからっ……、ダメッ……」
「ああ、汚い。……君なら汚くても、こうしたい。どれだけ汚くても、欲しい」
 その言葉に胸を締め付けられて井上を見下ろすと、まだ自分で捲り上げているスカートの裾から目だけがこちらを見つめていた。あの眼光が紅美子を貫いていた。「……君も欲しい?」
 背中をゾクゾクッとした悪寒が駆け抜ける。
「……ほ、欲しい」
 紅美子が即答してしまうと、井上は脚の間から抜けて立ち上がり、バスタブに腰を掛けて正面から引き寄せてきた。導かれるままに脚を開いて井上の太ももを跨いでいく、片手を根元に添えて男茎を紅美子の方へ立て、
「挿れやすいように自分でズラしてくれ」
 井上に言われると、紅美子は肩に掴まったまま、躊躇なく片手でスカートを捲り、ショーツに指を掛けて引っ張る。何かに追われるように切羽詰まった表情で、井上が押し入ってくるのを誘うように腰を落とすと、剥き出た入口に亀頭を擦り付けられた。
「ううっ……、は、早くっ……」
「徹くんのじゃない、チンポでもいいのか?」
 露骨な言葉に紅美子は眉根を寄せた。聞きたくない、というように首を激しく振る。
 だが井上は紅美子の手首を握って肩から外し、欲情に赤らんだ顔に近づけた。指が唇に触れる。硬い、紫の石の感触――。
「やだっ……!」
 指がもげおちそうだった。井上が指輪を紅美子の頬や唇に擦りつけてくる。涙が鼻筋を伝って接面に流れこんで塩辛い。
「こっちを見ろ、紅美子」
 指輪にキスを強いられながら紅美子は薄目を開けた。「僕は嫉妬してる。……言ってくれなきゃ、君を壊してしまいそうだ。言わなきゃ絶対に挿れない」
「……ほ、欲しい……」
 眼光から目が離せない。井上を見下ろした紅美子に、懸命に後ろ髪を掴んで引く婚約者としての自分や、早田や、そして何よりも徹の手からするすると抜けていく夢想が興った。唇が開く。言ってはいけない。唇には彼が念を込めた紫の石が触れている。
「ほ、欲しい、あ、あんたの……、チ……」
 最後はリングの指に唇を強く押し付け、漏れてくる嗚咽に紛れさせてでしか言えなかった。井上が紅美子の腰を引き込んで貫いてくる。自重で最奥が押し上げられた瞬間、紅美子は大声を上げて絶頂に達していた。跨いで大胆に開いた脚の間から、また潮が噴き出して井上のスーツを汚してしまっている。ワンピースの裾にも撥ねたかもしれない。まだコートは手首に残っている。全ての着衣を身にまとったままの姿で、井上に貫かれている。服を脱ぐ時間すら惜しんで、この男の男茎を、自ら求める言葉を吐いてしまった……。
「君もいつか嫉妬で狂わせて壊してしまいたい。僕を殺すのはそれからにしてくれ」
 井上は劣情に塗れた息遣いの中そう言うと、硬く反り返った男茎で、為されるがままに膝を使う紅美子を何度も突き続けた。


「まさか、ってヤツ?」
 紅美子はソファに座ってタバコの煙を吹き上げた。
 徹が東京に来るのを前に、或る日電話で愛し合ったあと、甘い愉楽に身を漂わせているとなかなか通話を切ることができなかった。前に栃木を訪れた際に徹が紅美子のエプロン姿に興奮したのをからかい、内心嬉しく思った記憶を蘇らせて、ふと本当は着せたいコスチュームが無いのか尋ねてみた。
「……何だろう」
「何もないの?」
 電話の向こうの徹がゴソゴソしているのが聞こえる。恐らく電話で愛した時に放出した証をティッシュで拭っているのだろうと気を遣って、その雑音については敢えて何も言わなかった。
「だって」布が擦れる音が止んだ。「……中身の方が好きだから」
 徹の言葉に朗らかな気持ちになって、
「だめ。……ネット見たらいっぱい売ってるでしょ? 私に内緒で買って、次に東京に来る時に持ってきて。楽しみにして待ってる」
 と提案した。怯む徹に「ちゃんと用意しないと怒る」と言うと、すぐに承諾の返事があった。


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