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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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奸計1-1

 不倫の件はあっという間に社内に広がった。うわさ話はそこかしこでささやかれた。右往左往する社員もいた。
『あの田倉部長が? うそでしょう!』『自分の部下の奥さんに手を出すなんて!』『田倉部長も節操がないな』『女好きは本当だったんだ』『佐伯係長あんなに落ち込んでかわいそう』『係長の奥様って見たことあるわ』『若い』『可愛い感じ』『でも奥様も奥様かも』『部長が家にまで押しかけたって?』『お互い大人なんだから、なるようになるわよ』『でも、なんだか格好悪いなぁ』
 こんなうわさが乱舞していた。全て真実であった。なぜなら発信元は沼田だからだ。沼田は口の軽そうな女子社員にそれとなく漏らしたのだ。うわさはたちまち広まった。うそであれば数日で消滅するが、佐伯の表情からこれは間違いないと相成ったのである。
 上層部にもうわさが伝わったのだろう、田倉と佐伯が上に個別に呼ばれた。そのうち楽しいことが起こると期待していたいが、いつまで経っても何も起こらなかった。会社の帰り、石橋に安酒をおごって不満をぶつけた。何の得にもならないのだが、気軽に誘えるのは石橋しかいないといった事実もあり。
 男女の問題に関しては会社が介入することはあまりないが、心証を悪くすることはできた。今のところ田倉におとがめはない。とはいえ昇進にひびくようなダメージを少しは与えられたのではないか。上層部に例の写真でも送ればもっと痛手を負わせることができる。が、沼田には負い目があるためそれはできない。田倉と奈津子は相思相愛だが、沼田は脅迫して奈津子を抱こうとしたからだ。それを石橋に見つかった。問題がこちらに波及した場合まずいことになる。奈津子のことになると盲目になる石橋は侮れない。だから一応、酒をおごったりしているのだ。ともかく功労者は石橋でもあるし。
 もっとも騒動に巻き込まれたとしても、どのみちこれ以上の昇進は見込めないし、たいした影響があるとは思えない。憎い田倉をぶちのめすことができればいい。佐伯はかわいそうだが、痛快だ。
「なあ、お前はどう思うんだよ」
 お気楽な顔でビールをあおっている石橋を見て舌打ちする。やっぱりむかつくやつだ。
「進藤さんさえ何でもなければそれでいいです。あ、すみません、鶏カラひとつください、熱いの」
 遠くの方で「へーい、まいどありぃ。鶏カラ一丁」と聞こえた。
「熱いのね」
 石橋の声に「へーい、熱いの、承知」と別の店員が言った。隣で若い女の店員が笑っている。
「お前はのんきな野郎だな。なあ、もう追わねえのかよ、田倉たち」
「あれは終わりですから、もう終わりです」
「なんだよそれ。じゃあ、おれも鶏カラちょうだい」と奥の方に顔を向けて叫んだ。
「はーい、鶏カラ熱いの追加、まいどありぃ」と今度は女の店員が応じた。沼田はその店員に向かって親指を立てた。店員はピースサインを送り、矯正している歯を見せてきゃっきゃと笑っている。
「かわいいじゃねえか、なあ石橋。お前もっと鶏カラ頼めよ」
「熱いのがいいので、いっぱいは頼みません」と素っ気ない。
「んだよお前、もっと楽しく飲もうぜ」
「えっ? 僕は、まあまあ楽しいですよ」
 何をわけのわからないことを言っているんだ、といった顔で石橋は答える。
「あー、もういい、あーった、あーった。お前は現実の世界で生きているのかねえ。おれにはそうは思えんよ。ところで石橋、ビデオ他にもあるんだろう」
「な、何の話ですか」
「ビデオだよ、ビデオ。奈津子が、がっぽんがっぽんやっているビデオ」
「そんないい方しないでくださいよ、いやらしい。ないですから。あれで終わりですから」
 石橋は泣きそうな顔で言う。何度聞いてもないという。
「あーったよ。なあ、毎日同じビデオ見て飽きねえのかよ」
「飽きませんから」
「げはは、飽きねえのかよ」
「毎日は見てませんから」
 石橋は顔を赤くする。
「見ないでオ○ニーするのかよ。じゃあ奈津子の写真か?」
「ええ……い、いえ」
「げはは、いいじゃねえかよ。どうせおれらは独りもんだしよ。なあ、ダッチワイフでも買うか?」と石橋の肩を叩く。
「えっ……か、買いませんよ。何ですか、それ」
 石橋のうろたえかたが妙な感じだったので、「ダッチワイフだよ。オ○ニー用の。ほら、奈津子に見立てたダッチワイフだよ」と鎌をかける。
「えっ、ど、どうして、いや、似てませんよ……あっ、何ですか、それ」
 沼田は石橋の顔をのぞき込んで「似てないって、なんだよ。お前まさか本当にダッチワイフ買ったのかよ!」と声を荒げた。回りの客が振り向いたので、沼田は背を丸めて鶏カラにかぶりつく。
「なあ、どんなやつ買ったんだよ。写真あるか写真。お前のことだからあるんだろう。見せてみろよ、ほら」
 石橋は抵抗したが押し切られ、絶望的な顔でケータイを取り出した。
「おれ、お前のそういうところは、わりと敬意を払ってるんだぜ」
 沼田は屈み込んでそれを見た。


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