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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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2.湿りの海-18

 井上に支えられているから、もう一方の手を外してもソファから落ちる危険はなかった。その手が引き寄せられ、屹立し脈打っている勃起を握らされる。ピクッと紅美子の指は一瞬拒みそうになったが、その熱く硬い感触に井上が手を離しても握り続けた。「……次に会うまで、たまらなくなるだろ?」
「なんないわよっ……」
「なるさ」井上の指が二本に変えられて、再び中に埋められてきて、紅美子が高い声をあげる。「君は知ってしまったんだからな。今週、いっぱいしたろ?」
「うあっ……、だ、だめ……、キツいっ……」
「手を動かしてくれ」
「……変態」
 紅美子が瞳を開いて井上を潤んだ瞳で睨むと、グイッと抱き寄せられて唇を押し割られ、じゅるっと音を立てて舌を吸われる。忌まわしい音なのに唇が緩んでしまう。
「一人で気持ちよくなるな」
 唇を押し当てられ、髭に敏感になった耳を擦られながら熱っぽく囁かれる。知らない間に雛先を弄り回していた。低い声が直接流れこんできて情動を揺さぶってくる。紅美子はクリトリスを弄る指の動きに合わせて、まるでそこからもたらされる快楽を井上に伝えるように男茎を握りこみ、指で傘や幹を揉みほぐして上下させた。呼応して内部に呑み込んでいる二本の指が更に紅美子を押し開き、淫靡な愛撫を送り込んでくる。
「すごく気持ちいい」
「……そ、そう……」
「紅美子も気持ちいいだろ?」
「……な、名前呼ばないでっ……」
 耳元で名前を呼ばれると、全身をゾクッとした爽感が駆け抜けて、男茎と指をギュッと締め付けてしまう。
「気持ちいい筈だ。……紅美子も」
「だから名前っ……」と言うや否や、Gスポットを二本の指が押し上げてきた。「うあっ……」
 二本の指が高速で上壁をかき回してくると、直裏の尿道から熱い奔流が通っていった。クリトリスを弄る指に温かいしぶきがかかって、足の付け根を流れてヒップから垂れ落ちていった。
「また漏らした」
「い、言うなっ……」
 あまりの羞しさに井上の腕の中で身を縮めて顔を胸躯へ押し付けた。額に感じる井上の肌はじっとりとして、ムスクの香りに交じる汗の匂いが鼻腔を擽ると、尿道口からまた飛沫が飛んだのが分かった。
「んっ、だめっ……」
「その爪だと中に指を挿れるのは危ないな。一人でする時はオモチャにしたほうがいい。ネットでこっそり買える」
 顔を背けている紅美子に半笑いの声が聞こえる。
「……そんなの、買うわけない……」
「そうだな。確かにオモチャなんかに負けたらくやしいね」
 井上が言って指音を響かせてくると、紅美子は井上の胸板に唇を押し当てながら叫んだ。「僕のを、ちゃんとよく憶えておいてくれ」
「……や、やめて……」
 指が内部を弄り回す感覚、手に握った男茎の感触。それだけではない、鼻孔から脳髄を痺れさせくるニオイ、唇に感じる汗の味、それら全てが紅美子のリビドーに深く刷り込まれてくる。それが嫌なら手を雛先と男茎から離し、井上の腕を振りきって離れなければならない。だが井上に包まれながら紅美子は沈んで響いてくる低い声に導かれるまま――引き返せなくなっていた。
「イッてくれ」
 耳にかかる髪を鼻先で除けられて囁かれ、紅美子は何度も首を振った。「……紅美子」
「やめて」
「おかしくなっていい。……今は、君は僕のモノだ」
 今は、と強調されると、紅美子の頭の中が白く霞み始めた。紅美子を必死に押し留め、警鐘を鳴らしているしがらみが薄白んでいく。
「わたしは……」
 指が止まらない。クリトリスが弾かれて自分の指も音を立てている。卑猥な響きが聞こえてくる。それでも指は止まらない。雛先の振動が下腹部へ熱く渦巻き、中で蠢く井上の指を締め付けて蜜を撒き散らさないではいられない。「……私は、誰のモノでもない……。やめて……」
「いや、君は僕のだ。今はね」
 井上が髪を掴んで伏せていた紅美子の顎を上げさせる。目尻から哀しみだけとは言えない涙が零れて薄目を開けると、冷虐な男の眼差しの中に、他ならぬ自分への慾を見つけると、最早脳裡が真っ白になって、
「……イキそう」
 そのまま涙と一緒に流れ出るように声が出ていた。
「いいさ。見ててやる」
「んんっ」
 井上の言葉に手を思う存分動かした。雛先だけではない。井上の男茎を強く握って情欲をぶつけながら、その感触を忘れ得ぬものにしていた。「……やあぁっ! ……見ないでっ!」
 身も心も破裂するするような錯覚に苛まれて、紅美子は叫び、暴れる体を井上にしっかりと抱きしめられ体を収縮させた。首が垂れるまで脱力しそうになるのを、髪を掴んでいた手が強引に引き寄せ、唇を吸われる。
「んっ……」


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