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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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1.違う空を見ている-27

 こんな夢見てるなんて、きっと、徹と離れて、本当は私、寂しかったんだ……。
「何だかんだ言ってたけど、結局、君はこういう女なんだろ?」
 低く響く声。徹のような優しさの欠片もない。背中に感じる胸板も、体に回されている腕もずっと筋肉質だ。
 おぼろげだった意識がはっきりと晴れた。明るい部屋。ベッドに座っている。ただ座っているわけではない。正面でカーテンが開け放たれた大きな窓に自分が映っていた。抱きすくめられている。両手を頭の後ろに上げて、バストをまさぐられ、もう一方の手は脚の間に差し入れられている。反射的に脚を閉じたが、それは男の手を内ももで挟み込んだに過ぎなかった。
「やっ……、ちょ……」
 窓に映る光景が理解できない。理解したくない。
 だが、視線を周囲に巡らせても、もう一度窓に映る姿を見ても、キングサイズのベッドの上で裸で井上に背後から体を触られているのは自分だった。大声を上げて身を捩ったが、井上の腕の中でビクともしなかった。
「今更何だ? そんな悲鳴上げたって、こんなになってるくせに」
 そう言った井上は乳首を押しつぶすように強く摘む。
「うっ……、やっ!」
 硬く勃起した乳首に強い圧迫を加えられると、紅美子の背中から脇腹、そして首筋へと、痛みの筈なのにゾクゾクとした爽感が駆け抜けた。えっ、と思った時には、体の奥が疼いて雫を迸らせてしまう。
「ほら、また濡らしたろ? 外まで出てきたぞ?」
 低い声で指摘される。「……まったく、こんな風に抱かれて濡らすなんて、君は相当なエロ女らしいな」
 井上は漏れだしてきた雫を指の腹で入口周辺にまぶし、顔を胸元に近づけてくる。
「なんで? ……やっ、ちょ、なんでよっ! ……あぐっ」
 紅美子は井上の頭を押し返し、力の限り殴ってやろうとしたが、瞬間くぐもった声を漏らした。手首がビクともしない上に、引いた瞬間首を絞められた。両腕は頭の後ろに回されて、肘を曲げた状態で、右の手首は左の二の腕に、左の手首は右の二の腕にバスローブの腰紐で結ばれ、余った緒が首を一周巡っていた。力づくでも腕を引こうものなら首が絞まってしまう。身を引き逃そうとしても井上に背を抑えられて動けず、身を斜めに構えさせられて、晒された美しいバストの先に唇が触れた。
「いっ……、あっ」
 先端を含み、中で舌先が乳輪の縁をクルリ、クルリと舐め回す。その周回が狭められて、中心で張り詰める乳首が生温かい唾液に塗れて弾かれた。指で圧し潰されそうになった痛感とは打って変わって、滑る歯がゆさが乳首に充満して背中が反ってしまう。
「やだっ……、なんで? ううっ……」
「なんで、なんでってうるさいな」井上が紅美子のバストに顔を擦り付けると、髭が肌に擦れて、乳首に与えられる局所的な快感で敏感になった乳房が疼きに包まれていった。「なんでも何もないさ。君は男に誘われて、酒を飲みに行き、その男に抱かれて濡らしまくってるだけだ」
「うああっ!」
 井上が乳首に歯を立てて噛むと紅美子は悲鳴を上げた。十年間慈しんで愛してくれた徹のような優しさは微塵もない、暴虐と邪淫の刃に身が殺がれていく思いがした。
「やめて……」
 紅美子が涙を漏らして呻くと、井上が抱いていた紅美子をそのまま荒々しくベッドに押し倒し、腕を拘束されて開いた脇に手をついて顔を覗きこんできた。髭を歪ませ、眼には姦虐の炎が揺らめいている。
「やめることはないだろ? 君も望んだことだ」
「ちがう……」
「じゃ、今の君のココはなんなんだ?」
 揃えた中指と人差し指の腹が、下から上に紅美子の狭間をなぞりあげ、最後は敏感になっているクリトリスを弾いてきた。井上の指が去ると同時にビクンッと腰が慄く。
「ちがうっ……! ちがうっ! やだっ……」
 左右に激しく頭を揺すって繰り返す。どこまでが夢だったんだろう。どこまでが徹の記憶の感触だったんだろう。取り返しがきかない省察に紅美子は胸を喘がせた。……そして、どこからが、この悪夢の始まりだったのだろう。どこからこんなにも濡らして、体を敏感にさせ始めたのだろう。
「違わないよ。……君は、僕とホテルのベッドで、イヤラしくなっているんだ」
 髪を掴まれて無理矢理に井上の方を向かされた。
「……お前なんかに、そんな風にならないっ」
「いい顔だね。君みたいな女には初めて会った。たまらないな」
 紅美子は涙を湛えた睨目で井上を見返したが、井上は顔を至近距離まで近づけて憫笑を浴びせ、「……キスは止そう。今の君なら舌を噛み切ってきそうだ」
 言っていきなり覆いかぶさられていた紅美子の視界から井上が消え、脚の間に体をこじ入れてくる。脚を塞いで防ぐ間もなく、井上の手で乱暴に美脚を開かれたかと思ったら、片脚の足首を掴まれて更に高々と上げられた。
「ぐっ……、見るなっ。死ねっ……、やだっ……」
 正座をするように座った井上の目の前で脚を大きく開かされる恥辱は味わったことがないものだった。ただでさえ紅美子の意に反してヘアを撓らせるほど濡れてしまっていることに頭がおかしくなりそうなのに、それをこの卑劣な男に全て見られている。
 井上が腕を差し伸ばして紅美子の入口に触れてきた。
「やだ……、いやだ……。……やあっ、徹っ! 助けてっ!!」


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