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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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1.違う空を見ている-13

「……あんたが声かけてるらしいって聞いてた子が、見てたら全然私とタイプ違ったの。同級生にしても、下級生にしても、何か、女の子らしーい、かわいらしーい子?」
 それを言ってやっても、早田は全く気にしていない様子で、
「そーなんだよ。そんなモテ自慢だけのために、タイプでない子と付き合おうとしちゃいかん、ってコイツに教わったんだよね、俺」
 と紗友美に言った。
「えー、じゃ、今も、そういう子がタイプなんですか?」
「だね。紗友美ちゃんみたいな子」
 と言って、飲み干せなくなって、何巡目か前のワインが残っている紗友美のグラスに、早田がチン、と音を立てた。うわ、私を踏み台にしやがった、ぶん殴ってやろうか、と、紅美子はその光景を見てワインをもう一口煽った。
「……んでさー」
「まだ続けんの?」
「いーじゃん。まだ笹倉出てきてねえよ。……、それ以来、学校内で一体誰が長谷を落とすんだ、ってことで、次々と男が告白したんだよね。でもことごとく玉砕。中には超本気の奴も居たと思うぜ?」
「向こうが本気とか、知ったこっちゃないし」
「……でさ、中三のとき、遂に近くの高校の向島で最高のモテ男が告白する、って噂になったんだよ。たぶん、その人、長谷のこと見かけてて結構マジだったと思うんだけど」
「向島で最高ってスケールちっちゃいよ」
 とは言ったが、紅美子は、もういいや、泳がせちまおう、と思って、また頬杖をついた。ふと井上を見る。井上も早田の話を聞いて時々声を上げて笑っていた。そして目が合った。この人、自分への視線を感じとる能力でもあるのかな、と思ったら、物知り顔で笑みを浮かべながら紅美子に向かって何度か頷いたので、屋上での大人ぶった態度が思い出されて、軽く鼻息を鳴らして顔を背けた。
「どうだったんですか?」
「あえなく玉砕。結構カッコいいし、他の女なら絶対なびいてたと思うんだぜ? なんてこった、一体あの氷の女を溶かすのは誰なんだ、って」
「誰が氷の女だ」
 あ、泳がすはずだったのに……。だが早田の喩えや評は、絶妙に紅美子の反論を引き出してくるのだ。
「そー、紗友美ちゃんもわかるでしょ? この女の冷たいツッコミ。これ。……まぁ、そんで、皆で途方に暮れてたら、その日の昼休み前の授業でさ、先生が終わりの挨拶した瞬間ガラガラってすげえ勢いでドアが開くの。何か笹倉がさ、つかつかと教壇に上がって先生押しのけて、卓に手付いたかと思ったら……」
「えっ、告白したんですか!?」
「……『クミちゃんは僕の彼女なので、皆さん、認識してください!』って、大声で。ザワッてなることもできないほどの剣幕で、シーンとなっちゃって」
「実は付き合ってたってことですか?」
「……ちがうだろ?」
 早田が紅美子を見てくる。無視しようとしたら、早田に加えて紗友美が、そして井上までもじっと紅美子を見てきた。
「……その日の夜に告白されたんだよ」
 視線の圧迫を耐え抜こうとしたが、そのまま一時間でも二時間でも経ちそうだったので、観念して吐いた。
「なんで笹倉の告白はOKしたんだよ?」
 早田が聞くと、
「本能的にイヤじゃなかったから」
 と即答して、早田から目を反らすためにワインを口にした。
「えー、長谷さーん。実はずーっと待ってたんじゃないんですかぁ? 幼馴染が好きだって言ってくるの」
「はいはい、そーです。そのとーりです。これでいい?」
 どうせ結婚するんだ、そういうことにしちゃってもいい。
「きゃー、ステキ!」
 真に受けた紗友美が高い声を上げた。
「……そんで、笹倉は『次は二組だ』とか呟いて出て行こうとするから、おいおーい、って、俺、止めたんだ。ちなみに俺、生徒会長。笹倉は副会長」
「あ、そうなんですね」
「そー。だから生徒会長として、右腕の副会長呼び止めてさ、『え、何すんの? お前』って聞いたら、『これから学校内全クラス回ってくる』って真顔で言うの」
 相槌を忘れた紗友美が口を開けて早田の続きを聞く。
「俺が冗談でさ、『それは笹倉らしくない非効率さだ。放送室から言えば一発じゃん』って言ったら、『そうか、さすがは早田くん。ありがとう』つって本気で放送室に行こうとするから、待て待て待て、と……」
 思い出した。確かに早田が居なかったら、いい晒し者だった。「『俺が言いふらして、皆に認識させるからやめろ、長谷が恥かかないようにするのも彼氏の務めだ』つったら、また『ありがとう早田くん』つって、やっと止まってくれた」
「えっと……、フィアンセ……徹? さん。ちょっと変わってます……?」
 紗友美が紅美子の方を向いて、哀れみまで含んだような目でおずおずと尋ねた。
「――そうだね。変わってるちゃ、変わってる」


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