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逃亡
【その他 官能小説】

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逃亡-9

スカートを脱ぎ終えた瑞紀は、純白のブラジャーとパンティをなんとか両腕で隠そうと、はかない試みをつづけている。
「隠すな。きちんと下着姿を見せるんだ。」
 緋村が手に持った無線機をチラつかせながら命令した。瑞紀は、しかたなく、両腕を身体の横におろす。
「さすが、想像以上にいい身体をしてるな。」
 緋村は瑞紀の魅力的な肢体を無遠慮に、舐めるような視線で眺めた。そして、その視線とシンクロするかのように、魅力的な姿態があますところなくテレビ放映される。
 身につけているのは、4分の3カップのブラジャーと、お揃いのセミビキニのパンティ。清楚な白い布製で、上品なレース刺繍がほどこされている。
 ツンと突きだした胸、ピョコンとヒップアップした尻、弾力のある白い太腿、すらりとした長い脚、背は高くないが、さすが元モデルだけあって、抜群のプロポーションだった。年齢より幼く見えるルックスのために、服を着ていると華奢に見えるが、こうやってみると、なかなかグラマーだ。
「さあ、全国のテレビをご覧の視聴者のみなさんに、ただいまご覧いただいている早瀬瑞紀警部補のスリーサイズを公表していただこうかな。」
 緋村がおどけて言う。
 瑞紀は、色白の肌理細かな肌を真っ赤に染めて立ちつくし、うつむいて血が出そうなほど強く唇を噛んでいる。
「バストはどのくらいあるんだ。」
「どうして、そんなこと言わなきゃならないんですっ!」
 たまりかねて声をあげる瑞紀の目の前に、緋村は無線機を突きつけた。
「東大卒の才媛のわりに物覚えが悪いようだな。自分がどういう立場か忘れたのかな?」
 この脅迫に逆らうことはできない。
「は…、85…」
 うつむいたまま瑞紀が答える。
「きちんとカメラ目線で、丁寧に答えろ。それにバストを聞いたら、気を利かせてカップも答えないといけないな。」
 緋村が正面のカメラを指差し、いたぶるように言う。
「バストは85センチ、Cカップです。」
 瑞紀は、耳まで真っ赤になり、今にも泣き出しそうな顔をカメラに向けて答えた。その様子は男の嗜虐性をかき立てる。
「ウエストは?」
「56センチです。」
「ヒップは?」
「86センチです。」
 答える度にモニターに、アップになったバスト、ウエスト、ヒップが映し出された。
「最後に訊くが、発信器なんかは隠していないだろうな?」
「隠していません。」
 そこまで質問すると、緋村は瑞紀が今まで身につけていた服を掴み、テレビ局のスタッフの方に放り投げた
「お前らにやるよ。持っていけ。」
「あっ!」
 思わず瑞紀が叫んだ。これで本当に、下着のまま緋村との逃亡を続けなければならないのだ。
「それと、お前。」
 緋村はATVの若手カメラマンに言った。
「は…、はい。」
「一緒に車に乗ってもらおう、車内の様子を撮影して報道する
んだ。」
 返事を聞くまでもなく緋村は、カメラマンを白いセダンの助手席に押し込むと、瑞紀を運転席に座らせ、自分は後部座席に乗り込んだ。
 すぐに車は発車し、住宅街の駐車場を後にした。

   *

「緋村は新たにATVのカメラマンを人質に取り、目白通りを東に逃走中。」
 追跡中の覆面パトカーからの無線の声で、警視庁のPFFT対策本部に詰めている細井警視以下5名の捜査官は、ハッと我に返った。
 全員、思わずテレビ中継の画面に見入っていたのだ。お互いにそれとわかって気まずい空気が流れる。
「発信器は無事のようです。」
 一番年長の内藤警部補が、その場の雰囲気を変えようと、わざと大きな声で報告した。
 デスクの中央に設置されたカーナビのような画面に目白台付近の地図が映し出され、赤い点が目白通りを移動していく。
「ほら、早瀬警部補の下着に取りつけるという案は名案だっただろう。」
 細井警視が得意満面の顔で、自ら考えた計画を自慢する。その時、警視は野上の顔を思い浮かべていた。野上は瑞紀の下着に発信器を取りつけることにも強く反対したのだ。
(それ見ろ、うまくいったじゃないか。)
 細井は脳裏に浮かんだ野上の顔に、心の中で自慢げに言った。


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