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バルディス魔淫伝
【ファンタジー 官能小説】

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拾われて飼われました 前編-7

海賊船が焼かれた煙が立ち昇るのを見て、海賊たちが道の途中で立ち止まり言葉を失った。
カラーム島は五年前にヤン・キースが立ち寄った時と変わらぬ珊瑚礁と白い砂浜と島の中央にある雄大なるサポル山の美しい景観のままである。
しかし、海岸から山の中腹まで石段と坂道でつながれた街の人々の様子は一変していた。
海賊たちと一緒に引き立てられているセリアー二ャとガーヴィは、街にいる獣人たちとヤン・キースたちと同じリザードマンの奴隷たちの姿を見かけた。
大理石の白い石造りの街のいたるところに色鮮やかな花が飾られたように咲き、また山からの湧き出る水が噴水のある広場ではきらめいていた。
柔らかな薄い涼しげな着物をまとった獣人たちは、赤毛で金色の瞳で、褐色の日焼けした肌をしていた。耳が尖っているのはエルフ族と似ている。
リザードマンたちは腰布だけをまとい、荷物をかついでいたり、労働に従事していた。
ヤン・キースたち船乗りのリザードマンたちとは途中で分けられて、セリアー二ャとガーヴィはさらに一段高い位置に建てられた館に案内された。彫像が並ぶ前庭に入る頃には手枷は外され、門から先は兵士たちではなく、褐色の肌の銀の髪飾りをつけた若い娘に案内されていた。
「あなたたちはこの国では見たことのない肌の色や瞳の色をしているけど、二人とも綺麗ね。連れていた奴隷たちを使って船で海を渡ってきたのでしょう?」
「船が焼き払われてしまって、これでは出航できぬ。それにヤン・キースたちはどこに連れて行かれたのか教えてくれないか」
「この島に来たら、あの船ではこの島から出られないもの。それに奴隷などいくらでもいるではありませんか。私はスーラ、貴族の娘なのよ。あなたたちも貴族なのでしょう?」
「こちらは皇子ガーヴィ様、私は従者のセリアー二ャと申します。船旅で難儀しておりまして、水や食糧の補充で島に立ち寄ったのです」
すると、スーラが笑みを浮かべて建物の中に入っていく。ガーヴィとセリアー二ャがリザードマンたちの言葉が通じることに顔を見合わせてから、スーラについて館の中に入って行った。
「娘はまだ若輩者で島でわがままに育てたせいもあり礼儀を知りませぬ。それにしても海を渡って旅とは苦労なさいましたな。あと七日もすれば神官様がこの島にいらっしゃいますから、望みの土地へ運んで下さるでしょう。それまで、我が館でおくつろぎ下さい」
スーラの父親はそう言うと酒杯を口にした。
街で見かけた者たちより恰幅がよく、身なりもゆったりとした見るからに上等な布の衣装をまとっている。
部屋を飾る複雑な刺繍のあるタペストリーや長椅子にかけられた白い布、そしてテーブルに並べられたふんだんな果実や魚料理。リザードマンの女性が小さな酒壺を抱えて立っていて、酒杯が空になるとそっと近づいて注いでくれている。
二人も歓迎の宴の席に呼ばれる前に衣服を変えさせられている。セリアー二ャはペンダントを肌身から離さなかった。ガーヴィも手袋を外さなかった。
ガーヴィは静かに果実をかじっていて、しばらくするとスーラの姉という娘がガーヴィにあれこれ話しかけていた。
セリアー二ャの隣にはスーラがいて、この小さな島国についてあれこれ教えてくれた。
海の向こうからリザードマンがやって来て金品を強奪したり狼藉を働いていた時代があった。ある日、島に訪れた神官が法術で結界を作り、侵入者たちを逃がさないようにしたが、島の民も海を渡ることができなくなったという。
結界をほどこした神官が定期的に瞬間移動で現れ、布教を行い、島に漂流してくるリザードマンを奴隷にする法を定めたので、島の民は貴族として働かずに暮らしている。
「あのね、この島にリザードマンではない他の国の人が、海を渡って来るのはめずらしいの」
セリアー二ャの胸元を飾るエメラルドのペンダントや瞳の色がめずらしいらしく、スーラがうっとりとセリアー二ャを見つめている。
島の実力者らしい二人の父親が手を叩くと、街からきた笛や太鼓の演奏をする者たちが演奏を開始した。すると、スーラと姉のラーダが立ち上がると、優雅に衣装や腰や乳房を揺らす見事な踊りを披露した。
セリアー二ャは思わず終わりまで目が離せなかった。
金色の瞳の人々は館の宴に訪れてはセリアー二ャから異国の話を聞き、また若い女性たちがガーヴィをもてはやし、賓客として迎え入れられたらしく、連夜で宴がもうけられた。
宴で酔い歌い踊ること、夕暮れ時には浜辺で手をとりあい歩くこと、こうしたことしか金色の瞳の人々はしていないようだった。一方でリザードマンの奴隷たちは疲れきるまで働かされていた。
セリアー二ャは一緒に上陸した陽気でひたむきで、気取った高貴さとは無縁で、野蛮かもしれないが晴ればれと笑うヤン・キースとその仲間たちのことを気にかけていた。焼かれた海賊船は彼らにとっては心臓のように大切なものであった。
宴の三夜目にリザードマンの女奴隷が酔った者にぶつかられて、わずかに酒壺から酒を床にこぼしてしまいひれ伏して謝っていた。
しかし、ぶつかった若者はリザードマンの腰布を剥ぎ取り、這いつくばらせて床を舐めさせたあと、鞭で激しく背中を打ちすえた。
リザードマンの女奴隷が気絶するまで酔った若者やその仲間が、交代で鞭で背中の皮膚が裂けてもまだ打ち続けていた。それが当たり前のように他の客たちは誰も止めずにいるので、セリアー二ャは唖然とした。
過去にリザードマンの種族が島を訪れて、強奪したかかもしれないが、あまりに残虐でむごい仕打ちをするとセリアー二ャには思えた。強奪をしたのは、この女奴隷ではない。ヤン・キースではない。
気絶した女奴隷のリザードマンを若者たちは庭園に引きずり出していく。
セリアー二ャが思わず立ち上がろうとした。すると、ガーヴィがセリアー二ャの手首をつかんで止めた。
「今夜、ヤン・キースたちを助け出す。それまでは動くな、黒猫」
思念をガーヴィがセリアー二ャに伝えてきた。


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