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バルディス魔淫伝
【ファンタジー 官能小説】

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拾われて飼われました 前編-12

セリアー二ャは洞窟に充満していてじわじわと流出している障気を絶つことができれば、島の呪いの効果は浄化できるはずだという推測をこの場にいる全員に聞かせた。
「あの化け物をガーヴィの旦那とセリアー二ャの姉御は、退治しようっていうんですかい?」
蛙人コル=スーは醜悪で不気味な化け物を思い出して身震いしながら言った。
「まず島にリザードマンがいなくなる。すると、荒淫と退廃で贄を自分たちの中から選ぶようになる。それでも贄が少なくなれば、やがてコル=スーが遭遇したものは洞窟から島に現れるだろうな」
ガーヴィはそう言った。
「あの化け物が島に出てくるなんて、最悪だ」
コル=スーは若く美しい黄金の瞳と褐色の肌をした姉妹を見つめてから、セリアー二ャに姉妹が這いずる腐肉の塊に取り込まれるのをおいらは見たくないから協力する、と言った。
「私たちが酋長の家に戻って、ラーダとスーラの姉妹にコル=スーが形見の指輪を渡している頃、山のふもとの街の人たちがどんなことになっているかなんて考えてなかったわ」
ふもとの街から山の中腹にある酋長の家に向かって山道を上ってくる島の人々は、異常な熱狂の中にいた。
洞窟から出たコル=スーのように、海を渡る風の優しさも空と珊瑚礁の海のすがずかしい青さも心に染み込んでくると感じられなくなるほどに、心から生贄を求めていた。
それまでの荒淫の恥と退廃の罪の一切をなすりつけて汚れなき太陽の下で、のどかに暮らす平和な民にかれらを返してくれる贖罪の贄を。
酋長の死について、ひそやかにカラーム島の民たちは神の啓示を伝える意味がある前兆だと噂していた。うらぶれた民たちの心には、異国の皇子と従者か島に訪れ、酋長が死ぬ前に二人に島の呪いを解くように神託が下されたという姉妹の話を聞いても疑いしか持たない者が多かった。
「神託を伝えたのに酋長ゾルムが死んだのはおかしいではないか。今まで、酋長の決めた掟に従って贄としてリザードマンを捧げてきたが、それはまちがっていたのではないか」
呪いは生け贄を捧げ続けても消えず、酋長はリザードマンではなく妻を捧げたが、死んだ。
本当はさらに酋長の娘たちを贄に捧げよという啓示がもたらされたのに、姉妹は異国の者たちの入れ知恵で隠しているのではないか。
そんなことを吹聴しているのは、酒宴の途中でリザードマンの女性を輪姦していた若者たちであった。
ラーダとスーラは酋長の娘たちであり、島の酋長となるべき者への生きた捧げ物でもある。そのため、酋長のゾルムが生きている間は、さすがに若者たちは手が出せなかったのである。
過去に酋長の妻に手を出した男は処刑されて、山の林に墓標も作られずに埋められた。
若者たちに煽動された島の民たちが、酋長の家にいるラーダとスーラを凌辱してから、贄に捧げようと迫っていたのだった。
扉が激しく叩かれた。スーラが扉を開くとそのまま外に引き出された。
「スーラ、どうしたの?」
ラーダが部屋に戻らないスーラの様子を気にして扉のほうに行った。すぐに悲鳴が上がった。
それを聞いた三人が家から出ると、島の民たちがラーダとスーラの衣服を剥ぎ取ろうとしていたところなのだった。
島の民たちは酋長の家から出てきた蛙人コル=スーの容姿を見ると、ざわめきながら姉妹に乱暴する手を止めた。
カナカイの蛙人。島の民に伝わる伝承では呼ばれているリザードマンよりも古い種族。
「カナカイの蛙人!」
「魔物が島を奪い返すために現れたのだ!」
島の民の男女の眼にセリアー二ャは信じがたい殺意があるのを見た。
蛙人の種族が遠い昔に島にいたのだろうか。古き語り伝えの中では、リザードマンの種族や金色の瞳の種族は、海から上がってきたという蛙人たちと戦ったといわれる。若いラーダとスーラの姉妹は知らない伝承でも、島の民たちは知っていた。
戦いに破れた蛙人たちは海に逃げたが「いつか島を奪い返す」と言い残して海へと去っていった、と伝えられている。「悪いことをすると、カナカイの蛙人が来て、海の底に連れて行かれるぞ」と子供らは親に怒られる。
現実にはいるはずのない、カナカイの蛙人を見た島の民は恐怖にたじろいでいた。
「ちくしょうめ、ラーダとスーラに乱暴するな!」
コル=スーは姉妹の腕をつかんで、セリアー二ャのそばに連れてきた。
カラーム島の民にガーヴィが言った。
「酋長の指輪を、このコル=スーは洞窟から持ってきた。お前たちの酋長はこのコル=スーだ!」
騒然としている島の民がコル=スーを見つめた。
姉妹がその左右に立ちしゃがみこむと、コル=スーの頬の左右からキスをした。
この島の婚礼の時に花嫁が新郎に行う行為である。
「二人に手を出すやつは、おいらが洞窟に放り込んでやるぞっ!」
コル=スーが叫ぶと、島の民はふもとの街まで騒ぎながら逃げていった。
島の民が立ち去ると両手両足を荒縄で縛られた女性が残されていた。姉妹と同じ黄金の瞳と褐色の肌だが、髪の色が黒髪のロングヘアー、まとっている衣服は旅人風である。
セリアー二ャが縄を外してやると、手首や足首をさすりながらゆっくりと立ち上がった。
「彼女はメリル・ストリという学者だった」
メリル・ストリは早朝に海岸で倒れていたのを島の民が捕らえて、姉妹と一緒に生け贄に捧げるつもりで運んできたが置き去りにされた。
蛙人コル=スー、ガーヴィやセリアー二ャを見て目を輝かせていた。
海を越えた土地のはるかに遠い砂漠で砂嵐に巻き込まれて、気がついたときには海岸で倒れており、島の民に囲まれていたらしい。
「この島はどこなの?」
姉妹からカラム島だと島の名を聞いてメリル・ストリは首をかしげていた。
「そこはたしか無人島で先住民の遺跡があったはずだけど。人がいるとは知らなかったわ。赤い髪の種族ってだけでもめずらしいのに、古代の蛙人とリザードマン、それに見たことのない種族の人たちが無人島にいるなんて……これは大発見よ!」


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