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THE 変人
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とんだ大物-1

 満足度130%のキャスティングだった。もはや釣れない気がしない。あまりの大物に恐れおののく自分が想像できる。信じられないぐらいの大物に地元新聞記者や釣り雑誌のインタビューを受けている自分さえも頭に浮かぶ。海斗はハンパないアドレナリンが分泌されていた。
 そして…。
 「来た!!」
いきなりずっしりとした重い感触が竿に伝わる。物凄いしなりだ。漂流している丸太かとも思ったが、遠く海面に波に隠れては現れる白い物が見える。
 「シーラカンスか!?いや、イカか!?大王いか!?とにかくデケーぜ!リュウグウノツカイかも!!ガハハ!」
かなり大きい。そしてこの重さ。リールは悲鳴を上げている。興奮状態の海斗にはそれが何の魚であろうと釣り上げて手にする事しか考えられなかった。
 しかしその熱くなった頭を雨風で冷やされていると、何か違和感を感じてくる。
 「…生命反応、ないな…」
重い事は重いが全然引かないのだ。あれだけの魚体なら暴れたら海に引きずり込まれてもおかしくないぐらいにグイグイ引くはずだ。やっぱ漂流物かなと頭をよぎったが、いやいや気絶してるだけだ!と自分を奮い立たせる海斗。とにかくリールを巻き続けた。
 格闘を初めてから30分、ようやくそれが寄ってきた。いよいよ岸壁に寄った。海斗は見るのが怖い。途中で絶対魚ではないのには薄々気付いていたが、それを認めたくない。
 「し、死んでても魚は魚だ。魚でないはずがないじゃないか!俺はとうとう成し遂げたんだ。誰もが無理と思われた巨大台風の中での釣りで前代未聞の超大物を釣り上げるという快挙を!さぁ、その快挙を確かめようじゃないか!」
無理してドラマチック仕立てにしつテンションを上げる。海斗は胸を期待で膨らませているつもりで海を覗き込む。
 「ん?んん…?」
一瞬何だか分からなかった。魚とはかなりかけ離れた物体に脳みそが追いつかない。海斗は眉をひそめてその物体を凝視した。
 「ん?…。えっ…??」
段々と脳みそがその物体を認識し始める。そしてそれが何なのかが識別できた時、海斗は驚き尻餅をついた。
 「う、うわっ…!?」
あまりの恐怖に体が震える。
 「ま、まさか…嘘だろ…。」
目の錯覚だと思い堤防を這いながら恐る恐る海を覗き込む。
 「ひ、ひゃっ!!」
何度見ても間違いない。まさに常識では考えられないものを釣り上げてしまった。海斗は体を震わせながら頭を抱え悲鳴にも似た声で嘆いた。
 「ドザエモン、釣っちまったぁぁ!!」
と。そう、海斗の竿にかかっていたのは魚ではなく人間だったのだ。とんだ大物をゲットしてしまった海斗だった。


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