あなよろし-1
夏休み日記帳 五年二組 美吉野さゆり
七月二十五日（金） くもり
夏休みが始まって少ししてから、わたしはおじいちゃんの家に来ました。お母さんが、しごとのつごうで二週間ほど外国に行ったからです。
わたしは母子家庭という家族構成なので、お母さんがいないあいだ、いなかのおじいちゃんに、めんどうをみてもらわくてはならなかったのです。
おじいちゃんの家は「ちちぶ」にあって、「ぶこうさん」という変にけずれた山の見えるところにあります。
わたしの家はマンションなのですが、おじいちゃんの家は「いっこだて」だそうで、とっても古いのですが、どこかなつかしい感じがして、わたしは好きです。
でも、虫が出るのがいやです。クモやゴキブリ、ゲジゲジも出ます。そんな家におじいちゃんは一人で住んでいます。おばあちゃんは三年前にあの世へ行ったそうで、仏だんに写真があります。
夏休みのうち、二週間ほど、この家にいることになります。お母さんがむかえにくるまで。
七月二十六日（土） 雨
おじいちゃんが「ちちぶめいせん」のゆかたを買ってくれると言ったのですが、雨ふりだったので、それは明日になりました。
わたしは夏休みの宿題を早めに終わりたいひとなので、午前に集中して勉強しました。
おじいちゃんは、ざしきで、花札という遊びを一人でやっていました。午後もやっていたので、わたしはおじいちゃんに花札ってなあにと聞きました。おじいちゃんはトランプみたいな遊びだと言いました。
花札は、日本的な絵がかかれていて、わたしは好きです。花とか月、鳥や動物がかかれています。「おののとうふう」という人物もかかれています。
わたしは花札の遊びかたを、おじいちゃんに教わりました。はじめはよくわかりませんでした。
でも、「いのしかちょう」とか「あおたん」を、覚えました。
七月二十七日（日） くもり
きょうは、おじいちゃんといっしょにデパートへ行って「ちちぶめいせん」のゆかたを買ってもらいました。きれいなもようで、とってもうれしかったです。
家に帰ってから、そのゆかたを着てみました。おじいちゃんは「にあうにあう、いろっぽいよ」と言いました。「いろっぽい」と言われて、わたしははずかしくなりました。
ゆかたを着たまま、おじいちゃんと花札をしました。今日は「あかたん」を覚えました。
「あのよろし」と書かれた札があったので、これはなにかと聞いてみると、おじいちゃんは、
「これは『あのよろし』ではなく『あかよろし』と書いてあるんだよ」
と言いました。どう見ても『の』という文字なのに、どうして『か』と読むのか、ふしぎでした。
夜、デパートで買ってきたスイカを食べました。わったスイカは赤くておいしそうでした。わたしはスイカを四分の一も食べたのに、おじいちゃんはあまり食べなかったです。そのかわり、ビールをたくさん飲んでいました。
七月二十八日（月） 晴れ
午前に、がんばって宿題をしました。ちょっとわからないところがあったので、おじいちゃんに聞いてみましたが、おじいちゃんもわかりませんでした。おじいちゃんはあまり頭がよくないんだと自分で言って笑っていました。
でも、花札は強いです。わたしはまだぜんぜん勝てません。でも、カス札を十枚集める「かす」という役を覚えました。
午後、近くの川を見に行ったあと、自由研究をなににするか考えましたが、まだ決まりませんでした。
夜、テレビで「しんれいとくしゅう」というこわい番組をやっていました。ゆうれいの話を聞いたので、わたしはそのばん、こわくてしかたがありませんでした。わたしは二階の部屋でひとりでねていたのですが、その夜はこわかったので、下の、おじいちゃんがねているざしきでねることにしました。
ふとんを並べてねました。
七月二十九日（火） 晴れ
（ここからは、日記に書けないことがあります。なので、これは、わたしの心の中のつぶやきです）
朝、起きると、わたしはうすいふとんをけとばしていました。暑くてね苦しかったからでしょう。おじいちゃんはまだとなりでねむっていました。おじいちゃんもふとんをけとばしていました。
おじいちゃんはランニングシャツにパンツでねていましたが、そのパンツがモッコリしていました。なんだろうと思って近づいて見ていると、おじいちゃんが目をさましました。
「おじいちゃん、このモッコリなに？」
と聞くと、おじいちゃんは「あさだち」だと言いました。
「あさだちってなに？」
と聞くと、ペニスが大きくなっているんだと教えてくれました。
ペニスがなにか、わたしは知っています。保健の時間で習いました。おちんちんのことです。それが大きくなることがあることも教わっていましたが、おじいちゃんもそうなるんだなあと思いました。なんだかはずかしいような、変な気分になりました。
すると、おじいちゃんが「あさだち、見てみるかい？」と言いました。わたしははずかしかったのですが、つい「見てみたい」と言ってしまいました。
おじいちゃんがパンツをぬぐと、ペニスがありました。でも、それは、しょうべんこぞうのおちんちんとはちがっていました。なんだか、焼いたタラコみたいでした。青い血管も見えて、ほんとうに焼きタラコそのものです。でも、タラコとちがうのは、先のほうが小さなモモのようになっていたところです。でも、そこは、うすいもも色ではなく、むらさきっぽい色でした。
おじいちゃんが「さわってみるかい？」と言うので、はずかしかったのですが、ちょっとさわってみました。かたくて、温かかったです。
なんだか、とてもエッチな体験でした。