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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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和解-5

「お願い母さんっ!ドナー登録をしてくれっ!」
「絆…。」

その夜、僕は居間で親に詰め寄った、今まで考えられないほど避けていた人に距離を   詰めて…。

「僕!僕、生きたいっ!生きて色々な事がしたい。」
「……。」
「絵だって描きたい、個展だって開きたい。…大好きな人を悲しませたくないっ!」
「!!」

これまで見た事も無い、息子の物言いに目をひたすら丸くさせ。

「母さんが今、どう思ってるのかまだ解らない、僕を生かすのだって本当は。」
「本当は、何っ?」
「!…。」
「アンタは私がドナー登録を今更勧め出したのは息子の為じゃない、そう思ってるん
 でしょ?」
「だって…。」

お互い静寂に包まれた居間で立ち合い、急に背を向け棚からある物を取り出す。

「それ、確か…。」

何処か見覚えのある汚い絵、そう僕が子供の頃、いずみの出産で不安そうな顔をしていた
母の為に描いてあげた絵。

「あら覚えてたの、そう、アンタが私の為に描いてくれた絵。」
「……。」
「正直あの時はとても不安だったのよ、幾らアンタを産んで一度経験してるとは言え。
 そんな時、これをアンタから貰った時、…とても嬉しかった!」
「!…。」
「その時から思ったのよ、私は母さんはアンタを産んで本当に良かった…って。」
「母さん。」

いつもの居間であって居間でない。黙って話しに耳を傾ける父といずみ。
 それから母は眉を立て、怒りの篭ったトーンで言う。

「だから…だからアンタに心臓病があると聞かされ二十歳までしか生きられないと聞いた時、とってもショックだった。」
「早苗…。」

父がポツリと母の名を久しぶりに名前で呼ぶ、母さん…ではなく。

「医者に突っかかった事もあった、「どうしてうちの子がっ!」「どうしてぇ!」って
 もう先生の肩をが外れ仕事が出来なくなるくらいに乱暴に揺さぶり問い詰めた、神様
 おも恨んだっ!」
「……。」
「そんな、お母さんが。」
「迷惑を承知で、何度も何度もしつこくしつこく診察室に来て、困らせてたな。」
「そうねあの時は目の前が真っ黒だったから、そんな私を止めるお父さんとも何度も喧嘩
したわね「どうしてそんな冷静でいられるのっ!」「絆が死んでも別に構わないってゆうのっ!?」って。」
「……。」
「母さんが落ち着くのには随分時間が掛かった。そしてそんな残酷な事実を受け入れた後
色々考えた。「病気の事、どう話そうか?」「きっと他の健全な子と比べ、自分に
 置かれた運命を呪うだろう」とか。」
「そんな…。」
「今まで、リハビリ代を求めてきたのに、杏ちゃんが来て、父さん達に詰め寄ったのに
 それでもお前に対して何もしなかったのは、決してお前を見捨てた訳じゃない。
「えっ?」
「恐かったんだ、母さんも、そして父さんも。逃げていたんだ、病気のお前と向き合うのが…。」
「父さん。」

知らなかった事実が次々と明らかに、母さん達は、僕を見捨ててなかった?。
 今まで固まってたものがじょじょに溶けていくような、そんな。

「だが杏ちゃんがあそこまでして詰め寄り、尚且つお前の明るい姿を見る限り思う…。
 お前はここで死ぬべきではない、この先もずっと生きるんだ…っと。」
「……。」
「ドナー登録をした所でアンタの病が消える訳では無い、それは解ってる。でもっ!
 母さん達は信じてるっ!何時か必ず適合者が見つかり、五年後も十年後も、元気で
 生き生きと自分のやりたいように生きる、そんな息子と出会える事をっ!」
「母…さん。」

母さん達の本当の愛に気付き、目がじょじょに赤く染まってゆき。

「こんな母さんが人に言える立場じゃないかも知れないけど、これからは一緒に頑張りましょうっ!」
「う、ううっ…。」

僕は本来最も身近にいる最愛の味方を抱きしめた、今までこみ上げた想いを全て出し切る
ように。

「そんな事ない!母さんは立派だよっ!それなのに、僕ってば勝手に見捨てられたと、
 酷い事を言ってぇっ!」
「絆ぁ…。」

滝のように涙が止まらない、それは母も同じで、顔面が真っ赤で。

「絆、絆っ!。私の大切な子、私の宝物っ!」
「うっううっ……うう。」

この日、長年固まってもう溶ける事無いと諦めていた物が、一気に流れ落ちていった。



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