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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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11.転獄-2

 夜の街並みの中、BMWは或る建物へ入っていった。小さなガレージに前から車を入れると、
「降りろ」
 と健介がキーを挿したまま外へ出て、バゼットが座る側の後部座席のドアを開ける。バゼットはすぐには従わずにいたが、
「……ほら、社長さん。降りてくださいよ。これ以上スタンガン、喰らいたくないでしょ? あんまり抵抗すっとカノジョさんにも痛い目見てもらうことになるし」
 と言われると、力の上手く入らない体を引きずるようにゆっくりと車から降り始める。
「おらっ……」
 背後から竜二も小突く。男たちを睨みつつ蹌踉としながら降り立ったバゼットは、竜二のスタンガンが身から離れてチャンスかと思えたが、正面から健介がナイフを構えていては行動を起こすことはできなかった。何より助手席には悠花が残されている。この身が傷つけられても抵抗を続ける気にはなれるが、悠花を盾に取られると何もできないだろう。悠花も確実に救い出せるチャンスでなければ、荒っぽいことはできなかった。
「……どうぞ、カノジョさんも降りてくださいよ?」
 バゼットを竜二に預け、回りこんできた健介が妙に慇懃な態度で助手席のドアを開ける。悠花はバミューダサンダルの踵を震えでタイル床に鳴らしながら車を降りた。高い塀に囲まれた、どこかの建物の薄暗い駐車場。プロパンガスのボンベが並んでいる隣の扉を開けた先へバゼットが歩かされていく背中が見える。悠花も彼らについていくしかなかった。
(……ここは)
 乗せられたエレベータに見覚えがあった。この古さ、内装……。四人を載せたエレベータの扉が開き、折り口から伸びる廊下の景色が見えると、
(やっぱり)
 と確信に変わった。車入れから建物に入ったので気づかなかったが、廊下に並んだ扉とドアの上で点滅する部屋番号。ここは五反田で、一週間前に村本と入ったラブホテルに間違いなかった。しかも、バゼットが連れて行かれている部屋は、村本にふんだんに抱かれた部屋だった。偶然だろうか。いや、偶然だ。偶然に違いない。強盗に連れて行かれながら、悠花は努めて自分に言い聞かせた。
「おら、アンタも入んなよ」
 健介に促されて、見覚えのある部屋に入ると、先に入っていたバゼットへ竜二が太いビニールテープを片手に近づいているところだった。
「何するつもりだ」
 ハゼットがジャケットの上からビニールテープを巻きつけられそうになって、身を翻して抵抗しようとすると、
「おらっ。社長さん。暴れんなよ」
 と、部屋の入り口に立つ悠花の頬の前にナイフが向けられた。眼前に現れた照明の映り込むほど鋭利な刃に、悠花は、ひっ、と小さな悲鳴をあげて、肩を縮める。
「おいっ! 彼女に手を出すなっ!」
「だろ? じゃ、抵抗すんなよ」
 竜二は息を付いて棒立ちになったバゼットの胴へ、腕を固定するように何重にもビニールテープを巻きつけていった。
「おら、足。揃えろよ」
 バゼットの両足を揃えさせて足首にもビニールテープを巻き付ける。ビニールとはいえ何重にも巻きつけられると自力で解くことは不可能で、完全に自由を奪われた。
「ほい、一丁あがりっ」
 と立ち上がって言うや否や、竜二がスタンガンをバゼットの腰に押し付けるとスイッチを押した。
「おっぐっ!!」
 ドンッ、という衝撃が全身に走って、絞り出るような声を漏らしてその場に崩れ落ちる。
「おらっ、立て。そこに座んだよ」
 竜二はソファを促すが、バゼットは咳き込み、洟水と唾液を床に吐き出しながら動くことができなかった。
「立てっつってんだろ、コラァッ!」
 急に凶暴になった竜二は、くの字に倒れているバゼットの鳩尾を蹴り上げる。蹴られる度にバゼットが苦しげな声を上げた。
「やめてっ!!」
 ナイフを向けられながらも、バゼットが傷めつけられていく光景に耐えかねて、悠花は竜二に叫んでいた。
「……アンタからも、立て、って言ってやってくれよ……、なあ? 瀬尾悠花ちゃんよ」
 悠花は名前を呼ばれてハッと健介を見た。やはり男たちは自分が何者であるか知っている。そしてこの場所。もしかしたら、ここに連れて来られ、バゼットがこうして傷めつけられている元凶は自分かもしれない。頭をよぎったのは最早確信に近いのに、バゼットもいる前でそれを明確に尋ねることはできなかった。


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