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LADY GUN
【推理 推理小説】

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運命の銃弾-8

 遠くからサイレンの音が聞こえる。その音は次第に近づき山小屋の脇で止まった。そして車のドアが開き駆けてくる何人もの足音が聞こえた。
 「上原!!」
扉が開かれ石山の声が小屋に響く。立ち尽くす若菜の背中を発見した石山は警戒しながら中へと進む。そして向こうに血を流して床に倒れる人影を見つける。
 「う、上原…?」
殺戮の現場に鳥肌が立つ。何とも言えない恐怖感を感じた。
 「上原!」
石山は一気に若菜に走り寄る。拳銃を構え周りを警戒しながら俊介が後を追う。
 「上原!!」
石山は正面から若菜の体を揺する。俊介が田口の遺体に気付いた。
 「ま、まさか…死んでる…!?」
驚いて若菜に振り向く。目を閉じて天井を向いていた若菜がゆっくりと顔を下ろし目を開けた。
 「石山さん…」
忘れた声で呟く。
 「う、上原!大丈夫か!!」
若菜は力ないながらに微笑する。
 「わ、若菜…田口を…?」
俊介が若菜に言った。
 「俊介さん…。石山さん…、私は田口を殺しました。殺害の意思を持ち、彼に銃を放ちました。」
「なっ…」
言葉が出ない2人。そんな2人に若菜は言葉を続けた。
 「私は使用してはいけない銃を盗み出し田口を殺しました。私は殺人の罪を犯したんです。すみませんでした。私は田口を殺しました。」
両手を合わせ石山に手を向ける。
 「な、何の真似だ…?」
 「殺人の現行犯です。逮捕してください。」
 「そ、そんなことできるか!?」
動揺する石山を若菜はじっと見つめる。
 「悪い事をしたら罰をうけなきゃなりません。人を殺したら逮捕されるのは当たり前です。お願いします。」
そんな若菜に石山は悲しくなる。
 「勘弁してくれよ…。どうして俺がおまえに手錠をかけなきゃいけないんだよ…。ふざけんなよ…無理だよ…。」
 「お願いします。石山さんに手錠をかけられるなら私は幸せです。特例を作ってはいけません。お願いします。」
 「上原…」
石山は涙を浮かべる。死ぬほど嫌だ。いや、死んでしまいたい気分だ。静香を失ってから若菜がどれだけ苦しみ、そしてどれだけ血のにじむような努力をして来たのかを誰よりも知っている。歩んできたというより地面を這いつくばってここまで来たのだ。そんな若菜の姿を思い返すと涙が止まらない。
 「上原…そんな酷なこと、俺、できねーよ…」
しかし若菜は手を引こうとはしなかった。しっと石山を見つめている。そんな若菜に石山は涙を拭い手錠を取り出す。
 「分かったよ…、畜生…!上原若菜…、殺人の現行犯で逮捕する…。」
手を震わせながら手錠をかけた。
 「ありがとうございます。」
頭を下げる若菜。石山の心は張り裂けそうであった。状況は無線で捜査に当たっている全ての署員に伝えられた。
 「若菜…」
そう呟いた俊介に若菜は視線を合わせずに言った。
 「ごめんなさい…」
と。石山は若菜の体にブレザーをそっとかけてあげた。
 若菜は石山に付き添われ小屋から出る。


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