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音楽
【純愛 恋愛小説】

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音楽―前編―-5

「あぁ、知ってる。エリック・クラプトンでしょ?」

「やっぱり!?斎藤くん、すごい!趣味いいじゃん!」

「自分でいうか?北野さんておもしろいな。」

「嬉しい、やっと話が合う人に出会えた!」

由香は嬉しそうに何回も小刻みにガッツポーズをする。押され気味だった隼人も由香の満面の笑みにつられて笑ってしまった。

「斎藤くんとは一回も同じクラスになったことないでしょ?本当は話してみたかったのよね、斎藤くん人気あるし。」

 気分も高まり、由香はここぞとばかりに隼人に話し掛けた。言葉の最後の方は照れ臭そうにつむぐ。

「人気?」

「そうよ?頭よくて、優しくて!でも理系クラスだから近寄れないのよね。だから高嶺の花なの。」

「嘘でもそれだけ笑顔で言われると嬉しいよ。」

隼人は由香の言葉に思わずはにかんだ。思いの外可愛い反応が返ってきたので、由香もはにかんでしまう。

「ねえ、良かったらもう一回歌ってよ。」

少しの沈黙の後、隼人は素直に自分の願いを告げた。隼人の突然の申し出に、由香は顔を真っ赤にして思いっきり手と首を横に振った。

「無理無理むりっ!恥ずかしいもん!」

「なんで?さっきまで結構な声量で歌ってたでしょ。」

「いや、そんな、人様に聞かせられるようなものでは…。」

隼人の期待を外れ、力一杯に由香は断り続けた。最初はねばろうと思ったが、由香があまりに顔を赤くして慌てているので隼人は思わず吹き出してしまった。

「北野さんって、可愛いなぁ。」

「あ!斎藤くん、それは褒めてはいないね!?」

 お腹を抱えて笑いながら吐いたセリフに由香は食いかかった。明らかにからかわれていると分かり、抗議をする。

「いや、本当に可愛いと思うよ。」

笑いを押さえ、今度はちゃんと由香の目を見て隼人は断言した。急に変わった態度に由香は絶句する。

「どしたの?北野さん。」

「斎藤くん!殺し文句!」

「殺し…?」

「あーもう!ドキドキしちゃったじゃん。なんか人気ある理由が色濃く分かっちゃった。」

由香は心臓を押さえて動悸を鎮める動作をした。相変わらず顔は赤いまま、必死で呼吸を整える。


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