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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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9.綻び-6

「……断ったら、どうせバラ撒く、とか言うんでしょ?」
「あはっ……、せいか〜い」
 苛立たせる返答に、また舌打ちが出る。
「明日は朝から夜まで仕事なんだけど」
「いや、明日じゃなくてもいいよぉ。一週間後くらいなら、いつ空いてる?」
 拍子抜けだった。何なら今から会う、とでも言いかねないと思っていたのに、男は更に時間を置いてきたのだ。次の週は夕方から空いている日があった。バゼットがそこにデートの約束を入れてくるかもしれなかったが、あの日以来、メールでやり取りはしているがバゼットと直接会っていなかった。会う気になれない。どんな顔をして会えば良いのかわからない。空いている日を男に伝えながら、恋人を避け、卑劣な脅迫者との予定を先に入れている自分に胸が刺すように痛んだ。
「じゃ、その日仕事が終わったら連絡してね? あ、そうそう、プレゼントがあるんだ」
「は?」
「悠花ちゃんの写真集がバカ売れしてるお祝い、だよ」
「……何企んでるのよ?」
 村本が意外にも奸計高いことを知ったが故に猜疑心が働く。
「それはプレゼントを受け取ってのお楽しみ、ってやつさ。どおする? 事務所に届けようかぁ?」
「やめて」
 事務所にはファンからの手紙やプレゼントが届いていた。だがストーカー被害への警戒対策から、中身はスタッフが全てチェックしている。何を贈ろうとしているかはわからないが、事務所に届けさせるわけにはいかない。自宅マンションには宅配ボックスがあるし、エントランスとエレベータに電子ロックがあるから万が一留守中に来ても勝手に入ることはできない。
 悠花は仕方なく、男に住所を告げた。
 控室でずっと物思いに耽っているわけにはいかなかった。外にはスタイリストが待っているし、収録が終わった後はなるべく速やかに楽屋を明け渡さなければならない。悠花は立ち上がると衣装を脱ぎ始めた。スタイリストが用意した衣装は『La Moda』を意識してか、掲載されるスタイルに近しいものばかりだった。ラウンドカラーのブルーのブラウスとフリルギャザーの膝上丈のキュロットスカートを脱ぐと、下着姿の抜群のスタイルが鏡に映る。フェミニンなコーディネートの下に身につけていたとは思えない、レオパード柄のオフショルダーのブラとTバック姿。今からこの下着であの男に会いに行くのだ。
 自宅に届いた荷物をあけると、一葉の手紙とこの下着セットが入っていた。

『悠花ちゃんへのプレゼントだよ。
 次会うとき、この下着で会いにきてね。
 
 この下着は、今日、今から身につけるんだ。
 俺と会う日まで、ずっとね。

 起きてるときも、寝てるときも。

 もちろん、悠花ちゃんお仕事があるから、
 お風呂に入らないわけにはいかないのはわかってる。
 なのでお風呂やシャワーはOK。
 でもこの下着をまた付けてね。

 途中で脱いだり、洗ったりしたら分かるからね。
 時々チェックするからそのつもりで』

 手紙の内容もさることながら、男の指定してきた下着は、悠花が好んで購入することなど絶対無いような、痴女のようにセックスアピールを強調するようなものだった。
 ……一週間も下着を替えない。そんな姿で底なしの淫妄を持ったあの男に会う。
 まるで自分を玩具にするような指示、いや命令だった。口では何と罵り、軽蔑しようとも背くことはできない。時々チェックする、その言葉どおり、渋々その下着を身につけて生活を送る悠花に、度々メールが届いた。

『ちゃんと付けてる? 
 パンチラでもブラチラでもいいから、
 写メ送って』

 仕事中であっても休憩時間には、肌に張り付くその一端を写真に取って送らなければならなかった。そして毎日、シャワーを浴びた後も、また同じ下着を身につけなければならない。男に知られないように、洗いたての別の下着を身につけたくても、絶妙な間隔で確認メールが来着してその隙がなかった。
 鏡に映った自分の姿。その惚れ惚れするような肢体は、並の女ならば「安っぽいエロ」に堕してしまうデザインの下着を、決して気品を失わないセクシーさを醸し出していた。しかし一週間履き続けた下着は、生活していく上でやむを得ない汗や臭いをずっと同じ布で受け止め続けている。そして男と会う日が近づくにつれて短間隔に訪れるあのフラッシュバック。いけない、と押しとどめようとしても、クロッチに向かって熱い雫を漏らしてしまっていた。


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