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秘剣露時雨秘裂返しのお満
【コメディ 官能小説】

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姉と弟の特別稽古-6

「あい、わかりました。お満はお稽古のために、辻を抜けた神社の氏神様にお参りに行ってまいります。でも、祈願をすれば直ぐに帰りまする」

お満は瓶之真の思いを知らず、とにかく早くお参りを済ませて、直ぐに道場に戻ってこようと思っていた。

「な、ならぬ。そなたの稽古はそれだけでは無いぞ。神社の裏に三笠屋という饅頭屋がある。そこの饅頭を食せば元気モリモリとなる。我が道場にはそこの饅頭で体力を付ける習わしもあるのじゃ。あっ、なるたけ饅頭はゆっくりと食せねば力は付かぬぞ。何度も租借するのじゃぞ」

師の言った事は門弟達には初耳だった。首をかしげる門弟達の不審顔に気付かず、お満は師の言った事を繰り返した。

「あい、わかりました。お満はお稽古のために、辻を抜けた神社の氏神様にお参りして、神社の裏の…え〜と、三…笠屋さんのお饅頭でしたよね。を食べてから直ぐに帰ってきまする」

瓶之真は頭の中で素早く時間を計算した。幾らお満が呑気だとしても、これだけでは半刻(1時間)も掛らず戻ってくる。

(どうしたものか…)

思案していた瓶之真が、もう一度、神社の周辺を思い浮かべた。するとつい最近見た有る光景が脳裡を過り、ピンと閃くモノがあった。

「おうそうじゃ、お満、まだあるぞ。三笠屋の饅頭を食した後で、中村一座の芝居を見て来るがよい。中村一座は神社の通りの少し先に有るぞ」

瓶之真が思い浮かべたのは、つい最近演目の変わった中村一座の幟だった。芝居の評判は知らないが、芝居を見せておけば、稽古が終わるまで時間が稼げる。瓶之真は自分の考えにニヤリとほくそ笑んだ。

「ええっ、お芝居ですか!でもそれってお稽古とは言えないんじゃ…」

流石のお満も驚いた。これは稽古で無い事はお満にもわかった。

「お満、これはお満のための特別稽古なるぞ。中村一座の殺陣は実戦を彷彿するそうじゃ(知らぬがの)。この泰平の世に、真剣でのやり取りを見る機会は滅多に無いのが現状である。ならば芝居と言えども真に演じる殺陣を見るのも立派な稽古なるぞ」

疑心暗鬼になるお満に瓶之真は畳みかけた。

実戦感覚を身に付けるにはこの場で稽古するのが一番だったが、繰り返すが瓶之真にはこの場にお満が居ない事が何かと都合がいい。お満がこの場から居なくなるのだったら、神社に行こうが、饅頭を食おうが、芝居を見ようが何でもよかったのだ。

なんだかんだと言うが所詮は屁理屈だった。しかし威厳を醸しだす師の説明に納得したお満は、ニッコリと微笑んだ。

もし、竿之介がそのやり取りを聞いていたら、不審に思った事であろう。いやそれよりもお満に3つ以上同時に物を覚えさせる無謀を師に説いたであろう。

しかし、お満の凶刃から逃れて、道場の端で素振りを続ける竿之介には、師と姉の会話は全く届いていなかった。

「あい、わかりました。お満はお稽古のために、辻を抜けた…、え〜っと、な、中村一座の…、お饅頭にお参りして、え〜とえ〜と、一座の前の神社で芝居…ん?を食べてから、ん〜、三…笠屋さんだっけ?その氏神様を見てから直ぐに帰ってきまする」

「ん?あ、ああ、そうするがよいぞ。ほれ、これを持っていくがよい」

思いつきで稽古の内容を伝えていた瓶之真も、自分が何を言ったのかワケがわからなくなっていた。お満が言った言葉を適当に頷き、無け無しの小銭をお満に持たせた。

「わあい、こんない一杯、ありがとうございます。では、先生、お満は特別お稽古に行って参ります」

お満は頭をぺこりと下げると、もう一度、今から行う稽古の内容を、ぶつぶつと繰り返しながら道場を出た。



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