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ちちろむし、恋の道行
【歴史物 官能小説】

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その1 ちちろのむしと出会ひけり-15

 翌日からまた、お鈴の師匠としての姿が見られた。一度は瑚琳坊に断りを入れた彼女だったが、彼も遊び歩かず に師匠を務めることを約束したので、二人そろって子供らの面倒を見ることになったのだ。そうなると講義もはかどり、お鈴の容姿にばかり気 をとられていた子供らも、本来の手習いに少しは打ち込めるようになった。二人の師匠の呼吸は日に日によく合うようになり、さすが従妹同士 だと云われたが、陰では「あの阿吽の呼吸は従妹というもんじゃねえ。ありゃあ、恋仲のもんだ。現に、見なよ、時折じっと必要以上に見つめ 合ったりしてるじゃねえか」と囁かれていた。確かに瑚琳坊は講義の最中でも、ついお鈴の顔を目で追うことがあり、お鈴もそんな眼差しに気 が付くと、思わず視線を絡ませてしまうのだった。そのような噂は広まるのが早い。お峰の耳にもさっそく入り、

「なにさ、このところ瑚琳坊のやつ、なかなか誘いに乗らないと思ったら、あの小娘といい仲になっていたんだ ね」

袂をくわえ、ギューッと引っぱった。

 それから毎日のようにお峰は瑚琳坊の私塾に顔を出し、二人の様子を監視していた。だが、瑚琳坊はそれと気づ いてか努めてお鈴とは目を合わさなかった。しかし感働きのよいお峰は二人の間のぎこちなさを敏感に察し、ある日、子供らが潮が引くように 家路につくと、無理矢理瑚琳坊を戸口から引っぱり出して問いつめた。

「あの娘やっぱり、従妹なんかじゃないでしょ!」

女だてらに彼の胸ぐらをつかみ、

「あの娘と寝たでしょ!」

下からグッと睨みつける。その眼には蒼白い炎が揺れているようだった。瑚琳坊は例によってお峰の尻に手を回 し、茶屋に連れ込んで黙らせようとした。ところが今日のお峰はなかなかしつこく、その場でくどくどと恨み言を口にし、終いには大声を上げ て泣き始めた。いくらなだめすかしても、お鈴に当てつけるように、聞こえよがしに泣き喚いた。困り果てた瑚琳坊は、お峰をひっさらうよう にして表通りに出ると、折よく通りかかった駕籠に彼女の大きな尻を押し込んで、手近な出会茶屋へと駆けさせた。

 その日のお峰の求め方は凄まじかった。瑚琳坊を薄い夜具に押し倒すと、食い詰めた乞食のように眼をぎらつか せ、下帯を引きむしって魔羅を露出させるや痛いほどにしごきたて、噛みつくように肉竿を頬張った。ようやくに魔羅が固さを帯びると、馬乗 りになって腰を沈めた。あとはもう初めから半狂乱で尻を振り立てこすりつけ、獣のような唸り声を発し、炭火に炙られて踊る鮑(あわび)の ごとき女陰で魔羅をしゃぶりつくした。

半 刻後、ひりひりする陰茎を濡れそぼる女陰から抜き取った瑚琳坊は、糸の切れた木偶さながらの、ぐったりとしたお峰を残し、這々の体で茶屋 を後にした。一人蒲団に顔を伏せていたお峰は、久しぶりのみみず腫れの魔羅の余韻に浸っていたが、瑚琳坊の行為がどことなく醒めていて、 以前のような熱っぽさがないことを肌で感じ、口惜しさに唇を噛んでいた。

「やっぱり瑚琳坊はあの小娘と寝たんだ。それで心がそっちに行っちまってるんだ」

きつく握られた蒲団がよじれ、端がビリリとほつれて裂けた。

 想う男を寝取られた女のどす黒い情念は恐ろしいものである。それを知らない瑚琳坊ではなかったが、一度知っ たお鈴の女体の素晴らしさはあまりにも魅力的で、今宵も閉め切った長屋の奥の部屋で、若々しく弾むお鈴の身体を揉みしだく彼であった。

「ああ、瑚琳坊様……」

言葉には多く出さないが、お鈴の肉体は瑚琳坊に触れられるたびに性の喜びを深く感じるようになってきていた。 今夜も愛おしげに彼女の耳からつま先まで丹念に舐め回す瑚琳坊の舌の愛撫に、身をよじって全身で応えるお鈴であった。しかしこの夜、思い もかけぬ惨事が二人の身に降りかかろうとは予想だにしていなかった。


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