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LADY GUN
【推理 推理小説】

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湯島武史-7

 「そして武史さんを好きになれたのは私にとって物凄く嬉しい事でした。性格が積極的な事を除けば優里と私は殆ど同じような人間だとはさっき言いましたよね?好みから職場まで。だから優里が好きにならなかった武史さんを好きになれたのは特別な喜びがあったんです。優里とは違う自分の一部が嬉しかった。私はいつの間にか武史さんを愛していました。苦しいぐらいに。」
 「絵里は幼い頃の事を本気で謝ってくれた。そうしたら今までの憎しみが嘘のように消えてしまった。皮肉にも女によっておかしくされてしまった人生を女に救われたんです。それからは自分がしてしまった事への後悔の日々に苦しみました。何度出頭しようとしたか分かりません。でもすぐに絵里と結婚して子供まで授かった。僕はこの幸せを壊したくない…、そう思ってしまったんです。いつしか時が過ぎるのを待つようになりました。でもそんな都合よくはいかないものです。田口の事件で再び悩むようになりました。しかし幸せを壊したくない…、出頭する勇気が出ない。いつか警察がこうして僕を訪ねて来てくれる日を待つようになっていました。だからあなたが訪れて来てくれた瞬間、何かから解放されたような気持ちになりました。ようやく全てを話せる日が来た、と。」
だから冒頭の言葉があったのかと納得した若菜。少しの間、視線を落として頭の中を整理した。
 善の中に潜む悪、そして悪の中にも存在する善…、善悪の分別は難しい。現に目の前の元レイプ神さえも全くの悪には思えなくなっていた。
 「刑事さん、あなたが僕を見つけてくれたお陰で僕はようやく決心がつきました。警察に行って全てをお話しますよ…。」
そう言った瞬間、子供が帰って来た。
 「ただいま〜!」
長男の俊太と妹の未来だ。塾から帰って来たところだ。
 「あれ?お客さん??」
俊太が部屋に入るなり若菜を見る。
 「こんばんわ!」
明るく元気な声で頭を下げる。
 「こんばんわ♪」
優しい笑顔で答える若菜。すると俊太はいきなり言った。
 「お父さん、誰??超美人じゃん!!」
 「こ、こら…」
絵里が慌てる。
 「フフっ」
思わず笑ってしまった若菜。
 「もしかして浮気相手!?やるじゃん!あ…、もしかして修羅場!?」
 「ば、馬鹿!そんなんじゃないよ…!」
若菜はますますおかしくなってしまう。
 「お父さんと同じ会社で働いてる上原若菜です。よろしくね?」
 「よろしく〜!可愛い名前だね、若菜って!」
 「ありがとう♪」
 「お前、失礼だろ!」
若菜を前に舞い上がる俊太。
 「彼氏いるの!?」
 「あはっ!いないのよ〜。」
 「本当?俺も〜!」
 「あはっ!じゃあ付き合おうか!」
 「う〜ん、ちょっと考えさせて!」
 「あら…」
思い切りいじられてしまった若菜は苦笑いする。
 「上行ってろ!!」
 「は〜い!じゃあね若菜ちゃん!」
 「またね♪」
未来を連れて二階へ行ってしまった。
 「すみません…」
 「い〜え♪」
明るい子供に思わずにこやかになる若菜だった。


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