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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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オアシス-7


「良い機会だし……それに、ラウラがテオみたいに家出したら……オレ暴走ごときじゃすまねぇかも……」

 魔物父の娘への溺愛っぷりは凄まじい。

「キモッ。変な方向にいかないでよぉ?」

 血は繋がってないのだから恋愛は自由だし、と母親は顔をしかめた。

「ぶわぁか」

 魔物父は娘相手に嫉妬する母親に、ちゅうっとキスをして張り倒されるのだった。


 クラスタお馴染みの歓迎の宴では、パルが踊りを披露した。
 旅で覚えた軽快な踊りに加え、背中から生やした羽も使ってのパフォーマンスは宴を大いに盛り上げた。
 夜遅くまで騒いでいた面々も各部屋へと戻る頃、テオは要塞の屋上へ足を向ける。
 そこには踊り子の衣装を着たままのパルが、手すりに座って足をプラプラさせて小さな声で歌っていた。
 そっと近づくテオに気づいて歌いながら振り向いたパルだったが、顎をくいっと動かして続きを促されたので前を向いて歌を続ける。
 夜空に浮かぶ2つの月……金の月と銀の月が今宵は真ん丸で、寄り添うように輝いていた。
 それを見上げながら歌うパルの赤毛が風になびき、リズムに合わせて羽がパタパタ揺れる。
 歌が終ると、パルは大きく深呼吸してニッコリと笑顔をテオに向けた。

「いつかの砂漠の夜みたいだね」

「ああ、そうだな」

 出会ったばかりの頃、砂丘で歌うパルを誘って食われた事を思い出す。

「あん時の勝負はオレの勝ちだったな」

「勝負?ああ!そうだった!アタシが勝ったら朝勃ちで朝御飯だったよね〜」

 そうそう、とパルは懐かしそうにクスクス笑う。

「なぁんか色々あったな」

 砂漠で遭難中パルとリュディに助けられ、パルに『精』を食われ、エザルに着いたらリュディに殺されそうになり……2人の過去の話に、ランスとノアとの再会、クラスタで父親と出会い、ベランナ群生地では死にかけて……エザルに戻って吸血蔦を枯らして……。
 そこまで考えたテオは、ファンの方向に目を向けた。

「リュディ元気かなぁ」

 同じ方向を見ていたパルが、少し寂しそうな声で呟く。
 体内の吸血蔦とは分離できたと手紙は来たが、それっきり。
 気になるランスとの事や、一緒に行ったピィの事は書かれていなかった。



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