オアシス-6
「は、はい……非常に……反省してまして……その……」
もう冷や汗なんだか脂汗なんだか分からない気持ち悪い汗がじっとりと身体を濡らした。
元暗殺者だという母親は全身から殺気を放っており、対象じゃない周りの人物までもがブルッと震える。
「ま、自分で決めた事貫いたのは誉めてやるけどねぇ」
母親はくるくるっと指でダガーを回しながらニヤリと笑った。
別に本当に怒っていたのではなく、心配で心配で堪らなかっただけ。
テオの母親は少しひねくれた性格らしく、素直に感情を表現出来ない。
それが分かっている父親2人は、お互いに顔を見合わせて苦笑し合っていた。
テオはぶはぁっと息を吐いて、へなへなと腰砕ける。
「テオのお母さん凄ぉい♪人間技じゃないねっ」
「はは……まあな……」
はしゃぐパルにテオは乾いた笑いを返すのだった。
その後は親子水入らず、という事で家族4人になった。
「ラウラ、元気だったか?」
「うん。お兄ちゃんも元気そう」
妹のラウラは母親そっくりの顔立ちで優しく微笑む。
くりくりの黒い髪に紅い目、13歳のわりには大きな胸は完璧母親譲りだが白い肌はバートン譲りだ。
そして、彼女はとても穏やかで優しい性格をしていた。
これは、魔物父の努力の賜物と言って良いかもしれない。
「バートン親父はどうだった?」
「そうね、カッコ良かった」
「何?アンタ、スランに会いに来たの?」
母親は少し呆れた顔でコーヒーに口をつけた。
「あんだけ頑なに隠されちゃあ気になるってモンだろ。なあ?ラウラ」
「うん。気になる」
子供2人の意見に母親は視線を動かして魔物父を見る。
「あ〜…まあ、そうだな。隠せば隠す程、逆効果だよな〜とは思ったな」
「早く言ってよぉ」
「いや、一応お前とスランの問題だし……オレが口出し出来る問題じゃないかなぁっと」
だから本当の父親の話題になると、不機嫌になる母親に苦笑しか出来なかった。
「だから、今回ラウラを連れてきたんだ」
本当はラウラは留守番だったのだが、魔物父が無理矢理連れて来たらしい。