オアシス-4
「アハハっ!あの子が野性味ぃ?!」
「うん!スッゴいスッゴい美味しいんだよ!」
両手を握って力説するパルに、母親は涙で滲んだ目を向ける。
その目はテオと同じ紅い色で、パルは思わず顔を赤らめた。
「んふう〜♪パルちゃんはあの子が好きなんだ?」
「えっと、好きとかまだ良く分かんないけど大事だよ?テオが死ぬまで一緒に居たい!」
パルの答えはあまりにも率直で、聞いていた周りの人間の方が恥ずかしくなる。
ただ、母親はうんうんと頷いてパルの頭をヨシヨシと撫でた。
「そっかぁ〜」
どうやら最悪な第一印象が払拭できたらしく、パルはくすぐったそうに笑って更に言葉を続ける。
「でね、テオが死んだら肉体も食べるの♪」
ピキ
母親は笑顔のまま固まり、父親は顔をひきつらせた。
第一印象の払拭は、大失敗だったらしい。
「……お前は、馬鹿か?」
固まった母親と、凍りついた空気にさすがのパルもヤバいと思い、テオを呼んで来ると言ってその場を逃げた。
そして、テオを乱暴に揺さぶり無理矢理覚醒させて助けを求めたのだ。
「あぅ……だって……ホントの事だもん」
「どこの世界に子供が食われて喜ぶ親が居るってんだ……」
テオは気だるい身体を起こして頭をガシガシ掻く。
「テオは食べられるの……イヤなの?」
不機嫌そうなテオの様子に、ぺたりと座って足の間に両手を挟んだパルは恐る恐る聞いた。
「だから馬鹿だっつってんだよ」
テオは片眉を上げると、頭を掻いた手でパルの額をピンっと弾く。
「そういう事は2人の秘密が良いの。オレらの間じゃ食う食われるは『愛してる』とおんなじ意味があっだろ?他人に理解しろってのが無理な話だし、理解して欲しくもねぇや」
2人の間だけで通用する愛の言葉。
「あ、愛して……る?」
意味はやっぱり良く分からないが、その言葉は今まで聞いたどんな言葉より魅力的で魅惑的に感じる。
ボボボッと身体まで赤くしたパルに、テオはにや〜っと笑って顔を寄せた。
「ん。愛してるよ、パルティオ」
「う、えっと、んと……あ、アタシ……も?」
「なぁんで疑問形かなぁ?」
クスクス笑ったテオはパルの頬にちゅうっとキスする。