オアシス-3
「デレクぅ〜相変わらず良い男♪」
「カリーも変わらず綺麗だよ」
「ふふふ〜」
挨拶を交わす2人を、背後の魔物が軽く睨んでいるのをパルは離れた場所から見ていた。
(ふわぁ……キレーな魔物ぉ……)
話には聞いていたがテオの魔物父は本当に綺麗だ。
パルの魔物形態はもっさりデブな黒蜥蜴……パルは気後れしてジリジリと後退していく。
その魔物父は起き上がったバートンに頭を擦り寄せ、パッさパッさと尻尾を揺らして甘えた。
それを横目でチラッと見た母親らしき女性は、チッと舌打ちしてからデレクシスに向き直る。
「ごめんねぇ?なんか馬鹿息子が世話になっちゃってさぁ〜」
「いやいや、も、偶然。運命かってぐらいにね」
「ふうん?で?その馬鹿息子は出迎えもせずに何処にいるのよ?」
母親がデレクシスの首に腕を絡めたまま、辺りをキョロキョロ見渡した。
「あれ?そういえば……」
デレクシスも周りを見渡し、少し離れた場所に居たパルとばっちり目が合う。
「パルティオちゃん、テオドアは?」
デレクシスの言葉に、パルはびしっと背筋を伸ばした後、視線をあらぬ方向へさ迷わせた。
「あの……ね……ちょっとうっかり……」
「?うっかり?」
「えっと……その……食べちゃった」
ビキッと母親のこめかみに血管が浮き出て、デレクシスの首をへし折る勢いで締め付けた。
第一印象は……最悪な結果になった。
動揺する母親を何とかデレクシスから引き剥がし、事情を説明するとテオの家族はあっさりと納得する。
「なぁんだ〜びっくりしたぁ〜」
母親は胸を撫で下ろし、人間形態になった父親はまじまじとパルを眺めた。
人間形態の父親は、バートンがチビと呼ぶだけはあり身長が……控えめで、見た感じの年も下手したらテオより下。
きっと、これぐらいの年に魔物化したのだろう。
その父親の責めているのかどうか良く分からない視線に、パルは落ち着かなくソワソワした。
「……『精』って美味いのか?」
責めているのではなく、単なる素朴な疑問。
第一印象を払拭する良い機会だと思ったパルは、パッと顔を上げて元気良く答えた。
「あ、うん!特にテオのはね、野性味溢れるお肉なのっ!スッゴい美味しいよ!」
その答えに母親は大爆笑。