オアシス-1
南の大陸の最南端クラスタには、魔物を遮る巨大な要塞がある。
だが実態は異種族が共存出来るように研究するための施設だったりする。
そのクラスタは今日も賑やかだった。
「おっ……前な……」
ぐったりとベットに崩れ落ちた黒髪の青年は、赤い目で自分が組み敷いた赤毛の少女を睨む。
「ぅ……ごみん」
申し訳ない、と片手で謝りつつも満足そうな少女は、ペロリと自分の唇を舐めた。
「ぁ〜くそっ……ダメ……だ……」
青年は力尽きて深い眠りに落ちようとしていく。
「あ!ちょっと!テオっ!だめだよっ!今日、お父さん達来るんでしょ?!」
慌てた少女は青年、テオをゆさゆさと揺さぶり覚醒させようと努力するのだった。
テオはエザルでの問題が片付いた後クラスタに戻り、当主の元で働く事にした。
主な仕事は馬や羽馬などの生き物の世話と、魔物達とのコミュニケーション要員。
生き物に好かれ易いタイプだし、魔物の出すオーラに耐性があるのでとても重宝されている。
そのテオは、クラスタで働く事になった旨を手紙で両親に伝えた。
そして、返ってきた返事には『挨拶しておきたいから次の満月の日にお邪魔します』と書いてあり、それが今日なのだ。
「お前が 食うから だろう が」
朝っぱらからがっついたのは自分だが、まさかそこで『精』を食われる羽目になるとは思ってなかった。
「ぅ〜…だって……やっぱり美味しいんだもん」
体力が著しく落ちると固形物が食べれなくなる魔物少女パルは、テオの『精』が大好物。
クラスタは魔力が豊富な土地なので『精』を食べる必要は全くないのだが、テオとシているとどうしても食べたくなるのだ。
「あ゛〜だめだ……父さんら……来たら……よろ しく」
「ちょっ……テオっテオってばぁ!!」
「ぐぅ〜」
「あぅ……」
つい、うっかり、食べてしまった自分が悪いのだが、パルは非常に困ってしまう。
「ねぇ……人間が、好きな相手の両親に合うのって……一大イベントって……ホント?」
とっくに眠りの国に旅立ったテオに、パルはそっと聞いた。
砦の魔物仲間が教えてくれた……相手の両親に気に入られるかどうかは、人間にとって大事なのだと。