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It's
【ラブコメ 官能小説】

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翌日も翌々日も熱が下がらず、病院へ行ったらインフルエンザと診断されたことは今じゃ笑い話だ。
3月27日、陽向は保健所でウトウトしながら呼ばれるのを待っていた。
看護師と保健師の免許を申請するためだ。
番号は530番。
あと3人で呼ばれる。
次々と呼ばれていく人達も、この春から看護師や保健師として働いていく人達なのだろうか…。



国試の合格発表の当日3月25日、卒業式中に楓、千秋、奈緒と4人で厚生労働省のホームページをガン見していた。
結果は4人とも看護師も保健師も合格。
「ぶち上がるっしょ!」
という奈緒の一言で全員が爆笑した。
卒業式後は学部のみんなとお世話になった先生達と集まり、高級ホテルの会場でとことん飲んだ。
「おー、風間。どーだった?国試」
「へへ、どっちも受かってた!」
スーツは人を素敵にする。
冴えない男子代表の浩太を見て、失礼だがそう思った。
「そーゆー山ちゃんはどーだったの?」
「俺も両方受かってた。…乾杯だな」
「あははっ!」
カチンとグラスを合わせる。
と、そこに懐かしいキンキン声が割って入ってくる。
「陽向ー!」
金井ひとみだ。
早急に抱きつかれ、頬をプニプニと触られる。
「あたしも、両方受かってたー!いやー、実習の時はお世話になったね!」
ホントだよ!!!と思いつつも、それは懐かしき記憶の彼方だ。
「あたしの健康返してよ!」
「あっはははは!マジそれだよねー!いやー…ホントごめん。あの実習は陽向様のおかげですよ!」
酔っ払い2人と絡んでいると、どこからともなく「お疲れ…」と声が聞こえてきた。
振り向くとそこには絵美が立っていた。
3人で、うぉー!と声を上げる。
まさか絵美が現れるとは思ってもみなかった。
ケラケラ笑いながら実習の思い出話を語る。
辛くて辛くてどーしよーもなかった実習だったけれど、こうしてみんなで笑い合える事が幸せだ。
「…でもさ」
ひとみが静かに呟く。
「1人、足りないけどね…」
浩太も絵美も黙る。
どこから広まった情報かは分からないが、そのもう1人がパニック障害を患ってしまった事や、陽向が北海道へ行った事は学部中に広がっていたみたいだ。
「…1人欠けてもさ」
浩太が口を開く。
「辛いの乗り越えた仲間じゃん、俺ら。きっとあいつもきっと向こうで元気にやってるっしょ」
浩太の言葉に絵美は「そうだよね」と優しく笑った。
ひとみも「あんな図太い神経なら元気にやってるね、きっと!」とヘラヘラ笑った。
ふと、あの姿を思い出す。
精神が不健康になるということは、こんなにも人を変えてしまうものなのだと、あの時陽向は思った。
あれから彼女とは一切連絡を取っていないし、取ろうとも思わない。
「まっ、でもさ、今日はおめでたい日じゃん?楽しく飲もうぜ!」
浩太が笑いながら言う。
また4人でグラスを合わせる。
なんだか今、みんなとひとつになった気がした。

2次会はいつもの4人で過ごした。
飲みに飲みまくってカラオケに行き、店員に酒を要求するわ、店員に歌わせるわ、挙句の果てに奈緒が部屋で吐くわ陽向は寝るわで大変な騒ぎだった。
帰宅したのは翌日の6時。
久しぶりに若いことしたなぁと思う。
こんなことできるのも今のうちだ。
楽しかったな…卒業式。


「530番の方ー」
受け付けの人に呼ばれる。
陽向は立ち上がり、声の方へと向かって行った。


『明後日から研修?がんばれよ』
3月30日、湊からそんなメールが届いていた。
片付いていない1LDKの新居のソファーで陽向は携帯を眺めていた。
ここへは2日前に引っ越してきた。
職場からわりと近い場所に身を寄せることにしたのだ。
湊の家とは結構離れてしまった。

ピンポーン−−−

インターホンが鳴る。
ドアを開けるとそこには湊が立っていた。
「うす」
「わ、びっくりしたー!」
「意外と近い」
湊はそう言いながら勝手に部屋に上がり込んだ。
「全然片付いてないよ」
「ホントだ」
湊はケラケラ笑いながら「新居はどんなもんかねー?」と散策し始めた。
「車で来たの?」
「そ」
湊はテキトーに返事をすると、出窓に飾ってあるペンギンの置物を指でいじった。
可愛らしい木の音がする。
「こんなの飾る前に部屋片付けろよ」
「うるさいな、人ん家荒らさないでくれる?!」
「せっかく手伝いに来てやったのに薄情なやつだな」
「薄情で結構!」
こんなやり取り、前にもしたな…。
ふと、そんなことを思い出す。
すると、またインターホンが鳴る。
今度は誰だ?!
陽向がオロオロしていると、久しい顔が目の前に現れた。
「おーっす!ってか俺らここ来ていーわけ?」
姿を現したのは湊のバンドメンバーの亮太とジョージだった。
「え、りょーちゃんとジョージ?え、なに?!」
「いや、俺らもね、最初は断ったんだけど湊がどーしてもって言うからさ」
亮太が「なぁ?」と言うとジョージも頷いた。
「ま、ライブ前に少しくらい仕事してこーかと思ってよ」
「なに、湊どーゆーこと?!」
「冷蔵庫とかその他もろもろ引越し屋に頼むの高いだろ。俺らでなんとかやろーかと思って」
湊がニッと笑うと、今度は玄関からインターホンも鳴らさずに大介が入ってきた。
「っうお!あっぶねー!…おう、陽向!」
何なのかわけが分からない。
「えっ、何なのホントに…」
とか言っているそばから、大介の後ろから洋平と海斗も姿を現した。
「ライブ前に一汗かくかなー」
「陽向、引っ越し進んでる?」
2人の言葉に陽向は泣きそうになりながら笑った。
「なんなの、みんなして…もーっ……」
「お前が引っ越すっつったら、みんなして手伝うとか言い始めてさ。こーなったわけ」
「もーっ、ばかっ…」
陽向は涙を堪えながら湊の肩を叩いた。
最高すぎるよ…この人たち……。


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