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想ぃの行方
【青春 恋愛小説】

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想ぃの行方【裏】-1

世の中うまくできている。脇役がいてこその主役であり、脇役がいてこその物語…そう思っている。今回はそんな俺の騎士(ナイト)物語を紹介しよう。



「うーす、英士」

いつものように矢田が声をかけてきた。
本編では紹介されなかったが、俺の名前は『速水英士(ハヤミ エイシ)』。学年一モテる男『矢田潤平』の親友で、小学校からのくされ縁ってやつ。

「今日二組の奴らとサッカー勝負すんだと」

ワックスのついた栗色のふわふわした髪をいじりながら矢田は気分よさそうに言う。

「賭けつきだろ?」

「当たり前!勝った方のクラスの美人と一日デート♪やべー俄然燃える!」

秋風に矢田の栗色の髪が揺れ、矢田のおばさんのきつい香水の匂いが香る。

「うちのクラスの美人って誰だと思う?」

俺の質問に矢田は『んー』と少し考えた。
そうそう、気になっている人がいるかもしれないから言っておくと、矢田が俺を英士と呼ぶのに対し、俺が矢田を名字で呼ぶのは兄貴も『じゅんぺい』って名前だからだ。深い意味はないことだけ分かってもらいたい。

「内山サンとか美人じゃね?」

矢田の答えに俺は半分納得して、半分納得いかなかった。

「確かにあの子は可愛いけどな。……西野とかは?」

西野の名前がでた瞬間に矢田は目線を逸らし、一歩前を歩いて答えた。

「あぁ、心は和美人って感じだな」

矢田が西野に好意をもってることくらいすぐ分かる。好きな女の話になると目を逸らすし、一歩前を歩くのはほてった顔を見られないためだろう。昔からモテるくせに分かりやすい奴だ。



西野心。
男の間では隠れ美人だと秘かに人気を集めている女。すらっと綺麗なスタイルに迫力のある猫目の和美人。毅然とした態度に釘づけになる一方で、近寄りがたい雰囲気をもっている。しかも年上キラーだという噂もあり、出るに出れないという男も少なくはないだろう。
まぁ、そんな人物である。



「速水、二百円かしてくれない?」

白く細長い綺麗な手が差し向けられる。

「ん、どーぞ」

「ありがと、明日かえすから」

西野の人気ポイントはおそらく『女』って立場を武器にしないところだと思う。物事を頼むとき必要以上に媚びないところとか。


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