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吉原昼景色
【歴史物 官能小説】

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第二話 黒相手-3

 霧橋花魁と黒い客人が三つ布団のある奥の部屋へ姿を消すと、入れ替わりに振袖新造の霧舟が現れ、廊下にいた 歓八を手招きした。そうして、前の部屋の片隅に立て回してあった屏風の陰へと素早く滑りこんだ。おくれて幇間が身をよじ入れる。昨夜、歓 八が霧舟に「異人と花魁との濡れ場の盗み見」を頼んであったのだ。

屏 風の裏側は畳半畳ほどもなく、身を寄せて座り込んだ二人の前は隣室の襖だった。その取っ手に指をかけ、そーっと細く開ける霧舟。しばら く、隣の様子をうかがっていたが、振り返ってにんまりと笑った。

「思ったより、よーく見えるよ。あんたも覗いてごらんな」

囁かれて、あぐらのまま顔を突き出し、片目を襖の隙間に近づける。

 花魁が客の衣を脱がしてやっていた。黒い男は下帯ではなく見慣れぬものを穿いていたが、それを脱がしてやっ た霧橋の手が止まった。同時に歓八は思わず声を上げそうになった。異人の陰茎の長さに驚いたのだ。だらりと垂れてはいるが、そんな状態で も七寸(約21センチ)はあるだろうか。

「……すげえ」

歓八がつぶやく。

「なに? なに?」

霧舟が幇間にかぶさるようにして襖に目を近づけた。

「……っ! 何あれ!!」

素っ頓狂な声が上がり、奥の間の花魁がこちらを振り向いた。が、うっすらと笑みを浮かべるとこちらを無視して 異人の「だらり」を手にとった。

「まあまあ、長大な一物でありんすこと。蛇で言ったら蟒蛇(うわばみ)でござりんす。じつにご立派……」

霧橋のうっとりした声音で、言葉は分からずとも異人は自分が褒められていることを悟った。そんな気をよくした 客の目の前で、花魁はゆっくりと、しかし手慣れた様子で着物を脱いでいった。襦袢もはずし、腰巻きも取って一糸まとわぬ姿。ほどよい量感 の乳房、くびれた腰、みっしりとした臀部。そして、ぬけるような白い肌。たいていの男は目が釘付けになる。現に黒い異人もそうだった。 が、霧橋がこの豪丸屋で一番の娼妓と呼ばれるのはそのたぐいまれなる容貌だった。丸顔でもなし瓜実顔でもなし、ちょうどよい骨相。潤んだ 大きな瞳。すっきりした鼻筋。おちょぼ口でありながら肉感的な唇。百人の男に聞いてみると九十九人が「惚れちまう」と答える美しさだっ た。そんな傾城が裸でしなだれかかる。客はそれだけで天にも昇る心地。そして、布団にいざなわれ、

「ぬしさん。わっちとともに、極楽へまいりんしょう」

耳元で熱い吐息とともに囁かれて桃源郷にいるごとし。

 柔らかい布団に横たわり、極上の遊女に添い寝され、白い手で胸やら腹をなで回されていた客だったが、霧橋の 指が黒い男の股間で遊ぶようになると、異人は太い声を低く漏らした。そして、白い手が黒い陰茎をやんわり握ってこする動作をすると、その 刺激で一物は張りを帯びはじめた。ひとまわり太くなり、ひとにぎりほど長さを増した。歓八の背にかぶさって覗き見していた振袖新造が密か に叫ぶ。

「……すごい。すっごい!」

霧舟が興奮するのも無理はなかった。「だらり」の時は七寸だったものが、今は九寸(約27セ ンチ)ほどにもなっているのである。

「へっ。すりこぎだね、ありゃあ」

笑いながらつぶやいた歓八だが、どこか引け目を感じていた。魔羅の長さには多少なりとも自信を持っていたのだ が、このすりこぎを目前に見ては、犬が尻尾を垂れるような気分だった。

長 大な男根が屹立したのを見て、花魁の作業は吸茎に移った。いきなりこんな業物(わざもの)を女陰に入れては壊されてしまうと思ったのだろ う。亀頭を頬張り、湿りを与える。鈴口を舌で刺激して、先走りの汁を滲ませようとする。


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