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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ソノゴ-4


「姫様!」

 慌てた従者が姫のドレスをツンツン引っ張った。

「ちょっと!止め……!?」

 ドレスを引っ張っられた姫が従者を振り払う様に手を上げた時、その手からスルリと扇子が奪われる。

「きゃああぁっ!?」

 もう1人の姫が金切り声を上げて天井を見上げたまま床に座り込んだ。
 目の前の従者ともう1人の姫が見上げる頭上を、手を上げたままの姫がゆっくりと見上げ……。

「ヒィ」

 息を飲んで腰を抜かした。
 姫の目の前には天井からぶら下がった……。

「に……人……参?」

 そう、それはまるで人参の様なモノだった。
 茶色く干からびた人参は、手足の様な部分がありその手の部分が器用に扇子を持っている。
 頭部分からは蔦が生えていて、それで天井からぶら下がっているのだ。

「申し訳ありません……扇子が……当たりそうだったので……驚いたみたいです……」

 店主は謝りながら人参を指で弾いた。

「ダメですよ?……姫様にお返しして?」

 弾かれてぷらんぷらん揺れた人参は、シュルッと蔦を伸ばして床に降りる。
 そして、トコトコと姫の前まで来るとペコペコ頭を下げながら扇子を差し出した。

「な……な……っ?」

 姫達はパクパクと口を動かしてはいるが、驚き過ぎて声が出ない。

「ご存じ……ありませんか?マンドラコラです」

 生きた魔法植物マンドラコラ……様々な魔法的薬品を作る為の材料として超貴重品。
 但し、土から抜く際に悲鳴を上げ、その声を聞いたものは失神……最悪の場合は死に至るという、手に入れるには非常に危険を伴う植物だ。

「ひいぃっ!!」

 マンドラコラと聞いた姫達は、恐怖のあまり従者共々床を這いずって店の外へ出る。

「あ……」

 慌てて逃げ去る姫達に、マンドラコラは扇子を差し出したまま固まり、店主は引き止めようと上げた手の行き場を無くしてマンドラコラと同じ様に固まる。

「ウチの子は……安全ですよ?」

 もう見えなくなった姫達に向かって、一応伝えておく。
 マンドラコラは、この店のマスコット的存在。
 小さな身体で店内をちょこまかと動き回る仕草が何とも言えず可愛いのだ。
 それも人気のひとつなので、てっきり知っているものだと思っていたが……どうやら知らなかったらしい。



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