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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ソノゴ-2


 ファンの城は火山の麓、南東側にあり、17年前に設立された魔法学園はその反対側北西に位置する。
 元は溶岩だらけの荒れた土地だったが、ファンの土地で最も魔力が溢れているのがここだったのだ。
 まあ、魔法が暴走しても被害が少ないし城の背後も守れるので最適な場所だったとも言える。

 その魔法学園が今、かつてない賑わいを見せていた。
 魔法学園の中央ホールには、魔法に関する店がいくつかある。
 魔法使い達の為の小道具や服を売る店、一般人の為の魔道具屋、そして様々な薬草やそれを調合して作った薬屋。
 今、その薬屋がちょっとした人気の店なのだ。
 こじんまりとした店は、緑色の蔦植物に覆われていた。

「ねえ!これ可愛いぃ〜」

「それに良い匂い♪どんな効能かあるんですか?」

 店内で若い女の子達がきゃあきゃあ騒ぎながら見ているのは、綺麗な布で出来た小さなぬいぐるみ。
 東の大国サイラ特有のちりめん布を使って作られたぬいぐるみからは、仄かに良い香りがする。

「全てに……リラックス効果があります……特に……空色のは……疲れた身体に……若草色のは……緊張した時……」

 きっちりと白衣を着てきっちりと緑金の髪をひとつに結んでいる店主の、ポツポツ話す声を聞き逃さぬように女の子達は身を乗り出して真剣に聞いていた。

「あと……その、紫色のは……」

「うんうん」

「……男性の好む……香りです」

 つまり、女性のフェロモンに近い匂いを調合して作った、性欲増強効果のある香り。

「きゃあ♪」

「私、買っちゃおう♪」

「ちょっとぉ〜誰に使うのよ〜」

「ふふふ〜ナイショ〜」

 テンションの上がった女の子達は、今度はクマさんにしようかウサギさんにしようかできゃあきゃあ騒ぎだした。

「ちょっと、貴女方そこ退いて下さる?」

 せっかくの楽しい一時なのに傲慢な声が邪魔をする。
 女の子達はムッとして振り向き文句を言おうとしたが、声の主に気づくと口をつぐんでその場所を開けた。

「お邪魔致しますわね」

 声の主は背後に従者を従えた貴族の姫2人組。
 姫達は扇子で口元を隠し、店内をぐるりと眺めた。
 貴族の姫がこんな場所に来るなんて……と、思いつつ興味津々な他の客は姫達を遠巻きに見ている。

「狭いですわね」

「それに、酷い臭いっ」

 確かに狭いし独特な香りが充満しているが、姫達のつけている香水のほうがよっぽど臭い。



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