ソノゴ-10
「それで、ですか?」
家族に紹介されたりしたら逃げようにも逃げられない、とかでなく迷惑をかけたくないから。
「それで……なんです」
それに、どうせ会うならちゃんと決意してからにしないといけない、と思ったのもある。
猛烈な反対にも負けない程の決意には、あと一歩踏み切れていなかった。
「な……んだ……じゃあ、もっと会いにくれば良かったです」
嫌われた訳ではないと分かって、ランスは息を吐いてリュディの肩に顎を乗せる。
「いっそのこと、弟に家督を押し付けて貴女を拐って逃げる予定まで立ててしまいましたよ」
ランスの言葉にリュディはゆっくり振り向いた。
「次期国王……の座を……?」
「はい。立派なファン国王になって民を幸せにするのが私の夢ですが……貴女とどちらかを選べと言われたら、迷いなく貴女を選びます」
国王になれる人間は他にも居るが、リュディを心底愛する事が出来るのは自分しか居ない、とランスは豪語する。
(そこまで……)
そこまで想って貰える様な価値は自分には無いと思う。
しかし、その価値はリュディが決める事ではない。
ランスがそうだと言うのだから……ランスにとって、リュディは最高に、自分の全てを捨てても良い程の価値のある存在なのだ。
リュディの中で何かが吹っ切れた。
決意までのあと一歩を、ランスの手が引いて進ませてくれた。
リュディはランスの腕の中でくるりと身体を捻り、彼とちゃんと向かい合う。
「ランス様……プロポーズを……お受けします」
真っ直ぐに言われた言葉に、ランスの顔が驚愕に変わった。
「ほ、本当ですか?!」
「はい……決心がつきました」
それだけ想ってくれているのなら、リュディにだって全てを賭ける覚悟がある。
「わ、わ、わっ……ちょ、ちょっと待ってて下さいっ」
テンパったランスは、パタパタと服を叩いて何かを探す。
目当てのものを見つけると、震える手でそれを取り出した。
「いつでも大丈夫な様に準備していました」
真っ赤な顔で小箱を握ったランスは、リュディの前に片膝をつく。
目を閉じて大きく息を吸って、ゆっくり吐き出すと緑色の綺麗な目がリュディを見つめた。