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失恋の先には
【青春 恋愛小説】

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失恋の先には-2

「好きだった子を諦めきれてないわけじゃないんだけどさ。今は誰かと付き合おうとか考えられないんだ。そんな気持ちのままで付き合うなんて女の子に失礼だからな」
「相手の事も考えてくれてるのね」
 向井さんは少し嬉しそうに笑っている。
「ならすぐにじゃなくてもいいわ。でも、秋田君がフリーの内は私、諦めないから」
 いつか振り向かせてあげるわ、向井さんはそうも付け加えた。
「それじゃあまた明日ね。秋田君」
 向井さんはそう言って教室から出ていく。
「おう、また明日な」
 俺はそう言って、彼女を見送った。気付けば教室には俺一人。
「…さて、俺はこれからどうなるんだろうな…?」
 窓の外から見える桜を見て、俺はそっと呟いた。


 それから数日間で、彩華はあっという間にクラスのムードメーカーになっていた。持ち前の明るさを生かし、クラス全体を盛り上げる事に関しては彩華の右に出る者は
いなかった。
 向井さんは入学式の日以来、よく俺に話し掛けてくる。あと、俺にはよく分からないが、彼女はそれなりにモテるらしい。男友達からは、向井さんと仲良くできて羨ましいなんてよく言われる。言われたところでどうしようも無いんだけどな…。


 そんなこんなで入学式から二週間が過ぎた頃、彩華が深刻そうな顔をして俺のところにやって来た。
「ねぇ、徹平って向井さんとどんな関係なの?」
 彩華の第一声はそれだった。
「は?急にどうしたんだよ?」
 突然のことで理解出来なかった俺は彩華に聞き返した。
「だから、向井さんと…その…付き合ってるのか…どうかさ」
 彩華は途切れ途切れで、しかも小声でそう言った。
「どうなの?」
「別に付き合ってなんかないよ。誰かが言ってたのか?」
「…向井さんがね、徹平の事教えてって聞いてきたの。徹平の事、もっとよく知りたいからって」
「ふぅーん…。だから俺が向井さんと付き合ってると思ったわけね」
 彩華はこくりと頷いた。
「まぁ俺がフリーの内は絶対諦めない的なことは言われたけどな。入学式の日にだけど」
「そう…」
「お前本当にどうしたんだ?いつもの元気はどこ行ったんだよ」
 余りにも温和し過ぎる彩華が、だんだんと心配になってくる。
「別になんでも無いわよ…」
 絶対に嘘だ。こんな元気の無い彩華は中学時代、一度も見た事が無い。何でも無い訳が無いだろ?
「もしかして、何か悩んでるんじゃねぇのか?話ぐらい聞いてやるぞ?」
「……ぅん………」
 うっ!こいつ急にどうしたんだ!?物凄く従順になったぞ!!しかも今の彩華の声は、まるで寂しい子犬が飼い主を求めるような、そんな鳴き声…、もとい、声だったぞ。俺は思わずドキッとしてしまった。
「じゃ、じゃあ放課後にでもゆっくり聞くから。学校じゃ話しにくいだろうしな」
 俺の声は上擦ってしまっていたが、彩華はわかった、と、寂しそうにだが頷いてくれた。


 放課後、俺と彩華は同じ道を歩いている。中学が同じだったから、帰る方向も近いのだ。彩華はあれからずっと大人しいままだ。
「…あのさ、話せる事を話してくれればいいからな。別に焦る必要は無いぞ」
 マズイ。彩華がこんな状態じゃ逆に俺が焦っちまうじゃねぇか。何とかしなければ…。
「…徹平、私の事どう思ってる?」
 突然、それまでずっと黙っていた彩華が口を開いた。
「彩華のことをか?そうだな〜……明るくて元気が良くて、クラスのムードメーカー的な奴だな」
俺はそう答えたが、彩華はそれでは不満だったらしい。


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