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死の森の王国
【ファンタジー 官能小説】

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第2話 @ロサミア・アビゲイル-2

城壁の回廊の上、吹き寄せる風を身に受けながら、ひとり、ピル将軍は己の命を狙う女を待っていた。

将軍は命を狙われているというのに、まったく恐れを見せなかった。将軍は自分がもっとも強い生物であると確信していたので、むしろ、たったひとり、もっとも強い生物の命を刈り取ろうとする無謀な女に興味を持っていた。

ただの狂人か…それとも、自殺志願者…?

将軍は回廊から外を見つめ、自分の命を狙う女のことを考えていた。

まもなく、女が現れた。浅黒い肌をした女、手に剣を持ち、何も語らぬままジリジリと将軍に近づいてくる。

「こんばんは、お嬢さん。私になにか用ですか?」

ピル将軍は女に話しかける。しかし、女は何も答えない。

「個人的な恨みかな?わかるよ、あなたはとても未熟だ」

女の動きが止まる、と同時に、バネが仕込まれたような浅黒い肉体を躍動させ、剣を突き出し、薙ぐ。豹のような素早い動きを前に、武器を持たない将軍は圧倒され、防戦一方だった。将軍は女の繰り出す一撃一撃を太い腕で払いのけながら、なんとか凌いでいる。

「はぁああああッ!!!」

浅黒い女が気合いの声を上げ、身のこなしをさらに加速させた。女の一撃一撃がさらに鋭く、重くなる。将軍は相変わらず防戦一方だが、女の攻撃を確実に捌ききっていた。

「死ねッ!!」

女は渾身の一撃を将軍に加えようと腕を引いて力を込めた。そして、放たれた渾身の一撃を、将軍は簡単に掴んで止めた。

「えッ…!?」

急に流れが止まった。

(圧倒していたのになぜ…?)

女の表情が物語っていた、圧倒的に優勢だったはず…。

将軍は女の攻撃を捉えきっていないはずだった。しかし、止めのを刺すつもりのその一撃を将軍はいとも容易く捉えてしまった。

「その程度じゃ勝てないよ、私には」

と、将軍が言った途端、女は易々と吹き飛ばされ、回廊の壁に激突した。

女はなにをされたかわかっていない。将軍は拳を放ち、女の腹に一撃を加えたのだが、女にはそれが見えていなかった。

「………ぁ…ッ…ぅぅぅ…くッ…!」

女の動きが止まる。息もままならない様子だった。女は苦悶を浮かべたまま、回廊の床に身体を伏し、痛みに悶えていた。

女はここでようやく気が付いた。自分が優勢だと思っていた、それ自体が将軍の罠だということを。結局、将軍に遊ばれていたのだ。それは相手の力量を読み切れなかった証拠、そして、未熟の証だった。

身体の痛みと同時に感じる強烈な敗北感に打ちのめされ、女は完全に回廊の床に倒れてしまった。


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