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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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5.姿は作り物-9

 村本は急に車道に向かって手を上げると、すぐにタクシーが一台止まった、
「の、乗って……」
 自動ドアが大きく開かれ、エスコートするように、手を広げて中に入るよう促した。
「どこ行くの?」
「いいから、は、早く。モタモタしてると、後ろに迷惑だよ」
 と言うが早いか、後続からクラクションが聞こえた。仕方なく悠花は中に乗り込んだが、デニムミニのせいでタクシーの後部座席に座すると、膝頭を突き出した脚が、更に露わになってしまう。男だけでなく、運転手のバックミラーの視線も気になるから、悠花はミニの裾の上へバッグを置き、その上から両手のひらを被せるように添えた。本当はストールで下半身全体を覆いたかったが、それは今、村本のもつショップバッグの中にある。
「どちらまで?」
 村本が乗り込むと、自動ドアを閉めながら運転手が問うた。
「254に出て、ずぅっと、池袋より先まで走ってもらえるかな。近くに行ったら言うから」
「じゃ、春日通りから、そのまま254に入っていいですか?」
「ああ、うん。任せるよ」
 かしこまりました、と言って発車する。
 悠花は車の運転をしないため、二人の会話がどこの辺りを指しているのか、さっぱりわからなかった。何より、まさか村本がタクシーに乗るとは思ってもみなかった。上野はずっと来たことはなかったが、山手線に乗って通過したことは何度もある。例えば電車の中から見える鶯谷のホテル街。そこが最終目的地かもしれないと、勝手に予想していたのに、まさか上野を離れるとは思ってもみなかった。
 運転手がバックミラー越しに、サングラス姿の美脚の女と、対照的に全く冴えない醜い男が乗ってきたのをチラチラと見てきているように思えた。
 実際は、これまで乗せてきた様々な客、仕事での関係、不倫での関係、あるいは夜の商売女の同伴出勤やアフター、運転手にしてみれば美女と醜男の組み合わせは特段珍しいものではなかった。悠花がそこまで意識し過ぎたのは、やはりバッグでガードしていてもなお、心もとなく思ってしまう、脚の露出のせいだった。
「悠花ちゃん……」
 男からも運転手からも視線を避けるように、座席に凭れて車窓の景色を眺めていた悠花に、小声で隣から声が届いた。街中とは違い、いくら小さな声で話しても、運転手には聞こえてしまうだろう。ちらっと運転手の様子を見やったが、初老の運転手はさすがに若い女性向け雑誌の有名モデルのことは知らないようだった。といっても、この密室、コーヒーショップのトイレより接近している中で男と会話する気にはなれず、そのまま呼びかけを無視した。
 村本はトイレよりも距離が近まって、すぐ隣から香ってくる美人モデルのフレグランスに惚然となっていた。予定を繰り上げて目的地に向かうことにしたが、ここまで距離が近いと、耐え難い拷問のように思えてくる。タクシーに乗り込んだ時、座ったチノパンの中で男茎が苦しい角度になって、手でこっそりと修正しなければならなかった。中年と言われる歳になっても、勃起力は人並み以上だと自認しているが、最近では思い当たらないほど硬くなった股間は、信号待ちでタクシーが停まる時間すら恨めしく思うほどに、びくんっ、びくんっ、と不定期に脈打っている。
 無視されると、村本はスマホを取り出して、操作をし始めた。村本がスマホに触れると、悠花はどうしてもあの写真をどうにかしようとしているのではないかと気になって、顔を向けないまでも、神経を澄まして気配を伺ってしまう。やがて、スッ、っと、悠花の方にスマホの画面が差し出された。運転手には見えない角度で、例のメモアプリが表示されているのが見えた。 


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