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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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5.姿は作り物-4

 そもそも村本は今日、悠花がどんな格好で来るか予想していた。自分のイヤラしい目を避けるために露出を控え、パンツスタイルで来ることをピッタリと当てて、内心嬉しく思っていた。
 しかし一方で、多くの瀬尾悠花ファンが垂涎する美脚が隠されてしまっているのは、やはり惜しく思った。
 村本が指したマネキンは、黒のラメ生地のオフショルダーのトップスに、アイボリーのラム皮のショートジャケット、そして股下何センチだろうか、かなり短いデニムミニスカートを纏っていた。トップスのデザインがシンプルな分、デニムに施されたダメージとポケット周りのビス、そして腰に緩めに巻かれたシルバーの太いベルトが際立つ。
 女性にとって理想的なプロポーションに造形されている首なしマネキンに匹敵する肢体の悠花が、このデニムを身につけた姿を生で見てみたい――
「サイズはある?」
 村本の言葉に、入り口近くに立っていた悠花が、腕組みしたまま近づいた。村本の意図が分かってきたからだ。"Alluring"は丁度悠花くらいの世代向けのファッションブランドだし、使用している素材は悪いものではなく、縫製も丁寧で、この世代向けのファッションにしては単価も高めだ。だがマネキンが身に纏っているコーディネイトは、まるで今の店員がしているような、男の視線を誘うことを狙っているような辛口セクシー系で、悠花にとっては尻軽な女を反映したように見えてしまい、全く自分の趣味ではなかった。
「だいたいサイズは揃ってるんですけどぉ……」
 店員は近づいてきた悠花の姿を眺めた。だいたいの客は外見からサイズが伺い知れたが、悠花ほどのスタイルの客など来ない。ヒップハング気味のミニであるから、あまりサイズが大きいとフォルムが決まらない。
「測らせてもらっていいですかぁ?」
 と、店員は悠花の前に来て少し身をかがめた。
 村本に耳打ちで、こんな衣装着るつもりはないことを伝えるために近づいて来たのだが、間に割り込まれてしまった。
「あのぅ……」
 両手でメジャーを広げるがストールが邪魔になって採寸ことができず、悠花を見上げてくる。しかたなく悠花はストールを肩から取り、腕に掛けて再び胸元で腕組みをする際に、思わず大きな溜息が漏れてしまった。
(え〜っ……、瀬尾悠花って普段、こんな感じなんだぁ……)
 ウエスト周りを採寸している店員には、雑誌で目にしている笑顔とは違って、悠花の様子は倨傲に見えた。
「えぇっ……、細っ!」
 悠花の態度のせいで雰囲気が悪くなってしまった場を和ませようと、店員が数値を見て殊更に驚いて呟く。気を使わせているのはわかっていたが、謙遜を言う気にもならず、相変わらず悠花は腕組みしたまま別の方向を見ているしかなかった。
「……ええと、たぶん、Mでいいと思います。用意しますねぇ」
 無視された形の店員が、マネキンと同じ衣装を揃えに棚の方へ行った。
「ちょっと。あんなの着ないからね?」
 漸く悠花は、村本に向かって小声で文句を言うことができた。
「ふふっ……。俺、ああいうカッコ、結構好きなんだぁ。ちょっと『オトナギャル』っぽい感じじゃん?」
「だから。そういうとこが、ホント、気持ち悪いから、やめ――」
 言葉を継ごうとすると、店員が全て取り揃えて戻ってくるのが見えたから、打ち切らざるをえなかった。
 店員は戻って来る途中で、村本と悠花に向かって、
「試着、されますよね?」
 と、試着室の前で停った。
 悠花が不要を伝えようとした横から、
「ああ、もちろん」と村本が言って、悠花を振り返った。「ほら――」
 店員の死角でウインクしてくる。その顔に舌打ちが出てしまい、それでもあまり時間をかけて店員に気を使わせるのも面倒だったので、渋々試着室の方へ歩みを進めた。近くに寄せられたオットマンに腰を掛け、ブーツを脱ぐ。
「サイズ合わなかったら呼んでくださぁい」
「……はい」
 試着室に入ると全ての衣装を渡され、ほとんど聞こえないような声で答えると、店員によってカーテンが閉められた。


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