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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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4.無知の罪、知の虚空-5

 悠花が婦人用トイレの個室に入ったのを見守ると、村本は息を鳴らして何度も深呼吸をした。カップに残っていたコーヒーを飲み込み、喉を潤す。チノパンの中では何日も自慰を抑止した男茎の脈動が止まらなかった。悠花と話していると何度もズボンの中が爆発しそうになっていたが、いよいよトイレに向かうのを見た瞬間、堰が切れて射精してしまわないように奥歯を噛み締め、大腿筋や括約筋に力を入れて押しとどめるのに必死だった。そのせいでより、吃ってしまった。
 ゆっくりと立ち上がり、踵をトイレの方へ向ける。
 あそこに瀬尾悠花がいる――
 そう考えると、ズボンの生地に先端がちょっと触れただけでも崩壊しそうなほど敏感になった股間を諌めるのに腐心した。どうしても歩みはゆっくりになる。もう限界だった。
「……はっ、は、悠花、ちゃん。……あ、あ、開けてくれるかな」
 個室に入り、ドアにもたれるようにして立って待っていた悠花の耳元に、小声とともにノック音が届いた。本気で婦人用トイレに入ってくるつもりらしい。こんなところが店員にでも見つかったら騒ぎになるだろう。
 このまま開けずに岩戸に閉じこもりたい……。
 しかし、既にスマホであの画像が公開される準備が整っている。恐らく操作は一瞬だ。
「は、悠花ちゃん……」
 催促のノックが聞こえる。悠花はため息をついて、大きな音がしないようにロックを外した。
 開錠音が聞こえると、村本はすぐさまドアを少しだけ開き、悠花の身をグイグイと中に押し込むようにして中へ滑り込んだ。
「ちょっ……」
 ヒールの高いブーツの踵音を鳴らして、ぐらつきながら奥へ押し入れられた悠花の耳に、再度鍵がかけられる音が聞こえた。
(近い……)
 本来一人用の個室スペースに、二人で入るとかなりの圧迫感があった。男の息音が聞こえるほどの距離で立ち並ぶ格好になり、男の胸が喘ぐように前後して、息が荒くなっているのがわかった。かなり興奮している。こんな場所で変に男を刺激してしまって、騒ぎを起こされては元も子もない。
「せまいんだけど……」
 外の様子が気になって自然と小声になる。身を逸らすように斜に背を向けて男の体が自分に触れるのを避けているが、二人の距離は数センチ程度しかなかった。
「……はあっ……、ぁぁ……。は、は、悠花ちゃん。い、いい匂いだねぇ……」
 男の声も小声だったが、周囲の目がなくなった分、カウンターにいたときよりも輪をかけて声音が気色悪くなった。
 村本は密室に悠花と二人きり、夢にまで見た距離に近づけたことで、さっきカウンターに並んだ時に鼻先に感じた、美人モデルの香水とシャンプーの入り混じった薫香を嗅ぎ、膝を震わせていた。
逆に悠花のほうは、まだ学生の時に混み合った電車の中で嗅いだ、中年親父から漂う加齢臭に、汗臭さも混ざった不快極まりないニオイに顔をしかめた。それに男の口元から聞こえてくる、荒い吐息音も耳障りだった。
「ね、ちょっと……、離れてくれない?」
「あはっ、……じゃ、じゃぁ、悠花、ちゃんは、そ、そこに、座ってくれて、いい、よぉ……」
 と便座を指し示す。このまま立ったまま男と接近しているよりはマシだと思い、悠花は便座へ腰掛けた。脚を組んでやろうかと思ったが、悠花が座るとすぐに真正面に男が立ってきたので、長い脚を組み上げるスペースはなくなってしまった。仕方なく斜めに脚を揃えて背筋を伸ばし、腕組みをして見上げ、
「こんなとこ連れ込んでどうするつもり?」
 静かに、しかし威気高な態度で言い放った。
「ふ、二人っきりに、な、なったら、い、い、言ってくれるんでしょぉ?」
 村本は座っている悠花の顔の前にスマホを差し出した。
 さっきのメモアプリに打ち込まれた文章だった。


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