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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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3.滑落-4

 逡巡したが、悠花はブログコメントに書かれたメールアドレスへ向けて返信していた。返信してからも、これでよかったのかどうか、まだ迷いがあった。しかし事務所はもちろん、バゼットにも相談することはできなかった。
 中学生の時はこの憂過を、悠花の人生から払い去ることはできなかった。ただ未熟だったこともある。しかしこうして数年経ってなお、この出来事に苛まれるのであれば、今後も苛禍にまみえることがあり得る。芸能界でステップアップしていればいるほど、公にされた時の影響は大きいだろう。
 今、ここで、断ち切らなければならない――。
 その日の夜中に返信が返ってきた。

『悠花ちゃん、連絡くれてありがとう。

 まずは自己紹介が必要だね。
 俺は悠花ちゃんの行く末を案じている男だよ。

 人気モデルの悠花ちゃんを、
 メチャクチャにしようなんて、
 これっぽっちも考えていない。

 そう断言する。

 だから添付のような画像が存在するのは、
 俺の大事な悠花ちゃんにとって、
 大きな問題だと思うんだ。

 お互いのこのメールだって、
 誰かの不正アクセスで、
 読まれてしまうとも限らない。

 このメールの返信は、
 下記のメールにしてくれたほうがいい。
 そして、お互いフリーメールは消去しよう。

 もしも……、
 悠花ちゃんが俺の【好意】を無視するなら、
 この写真を俺はどうするかわからない。

 1時間以内に返信がなければ、
 瀬尾悠花ちゃんは無視した、と考えることにする』

 添付されていた画像データは、背景は暗い室内、そして輪郭はぼやけているが、中央に大きく黒い影が写っている。下方には縮れた毛のシルエット。写真に切り取られた情景は、間違いなくあのカラオケボックスでだった。写っているのはあの変態男の「体の一部」、そこに伸びている指は梨乃のものだ。
 そして、背景の中、スカートの裾から素足を晒して組み、頬杖をついて軽蔑の視線を向けているのは、間違いなく中学時代の自分だった。当時と見た目の雰囲気が今と全く違えば、「自分ではない」と言い張れたかもしれない。だが写真に写っているのは、ヘアスタイルやメイクが多少違えど、例えばティーンモデル時代の画像と並べれば、殆どの者が特定できてしまう容姿だった。
(違うっ。私は何もやってない)
 そう言っても、この写真を見た者はそうは思わないだろう。まさかあの男が隠し撮りをしていたとは、しかも数年経った後になって、その存在を明らかにしてくるとは思ってもみなかった。好意、とわざわざ【】で強調しているが、いったいこれのどこが好意なのか。
 メールに記載されているアドレスは、携帯キャリアのものだった。その返事の猶予は1時間しか与えられていない。
 もしこのメールの来着に気づかなければ、タイムオーバーで本当に写真がバラまかれたかもしれななかった。そしてもし、相手の携帯アドレスに対して、フリーメールで返したら……、やはり相手は逆上してしまうのだろうか。
 悠花には、あの時の男の横暴ぶりから、本当に自分を破滅させかねないと思った。モデルとして、またグラビアを披露して世間的な知名度を上げつつある自分の個人携帯を教えることは、かなりのリスクがある。
 しかしこうして迷っている間にも、時間は過ぎていく。相手に返す文面を考える時間も必要だ。


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