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変容
【教師 官能小説】

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変心-11

 まず最初に頭に浮かんだのは、『しまった』という後悔だった。
 男は食事を置いていかなかった…。男のすることに従わなかったからだ。男は今回もビニール袋を持ってきていた。おそらくその中に食事が入っていたはずだが、男は結局、中から何も取り出さずに帰ってしまった。飢えの恐怖がまたぞろ這い上がってくる。

 あの男は一度しかチャンスを与えない。しかも時間にして数秒、長くても1分ほどしか。その時間が過ぎてしまえば、男は言葉による脅しや催促もせず、暴力による実力行使も行わず去っていってしまう。

 …そして、飢えという罰が待っている。いや、それだけではない。男は結局、その後は恵を抱くことも無く去っていく。つまり、射精せずに。それは開放までの時間が延びることを意味していた。

“やってしまった。一度経験したはずなのに。”

 口を汚され、性器を汚された。もうとうに貞操は失われたのだ。犯される回数が1だろうが2だろうが、大して違わないのではないだろうか。解放された後、夫に『1回しかレイプされなかった』『だから、まだそんなに汚されてない』とでも言うつもりか?

 男性にとって処女と非処女の違いは大きくとも、1度しか性経験のない非処女と3回の性経験がある非処女に違いがあるとは感じないだろう。非処女の分類はセックスの回数ではなく、経験人数なのが一般的だ。

 つまり、あの男にレイプされ貞操を失ってしまった私は、その回数が1だろうと100だろうと、夫にとっては単に『汚された妻』だということだ。ましてや、汚される回数を減らそうと男を拒否すればする程、開放されるまでの時間は延び、それだけ私の『汚された』イメージは強くなるだろう。何年間も監禁された女性が、『一度しかレイプされていません!』といくら叫んでも誰も信じはしない。もちろん夫も。

“覚悟を決めなければ。”

 生きて解放されることを目指すと決めたからには、今回のような中途半端な態度は許されない。男を拒絶し、失ってしまった貞操を守り続けても、それを信じる人はいないし、そこに価値を認める人もいない。ならば、一刻も早く解放されるため、1回でも多くカウントを稼ぐのが私の役目だ。きっと夫は全力で私を捜してくれている。二人の子供も待っている。私は私なりに戦わなくては!

 その思考が男の誘導通りであるとは露ほども思わず、恵は強く決心した。そして、そうと決めた後は、己の考えを補強する作業が行われる。

 そう。妊娠を避けてやり抜くためには口でするしかない。昨日寝る前にそう決めたはず。だからこそ、起きてすぐにフェラをした。でも、あの男はすぐにはいかないし、後ろ手に拘束されたあの姿勢では体力がつづかない。もっと上手くやらないと射精させられない。
 でもさっき、あの男はおしっこを飲めば射精1回分としてカウントすると言った。これはチャンスなのかもしれない…。おしっこであれば時間がかからないし、疲れもしない。口で2回するのは難しくても、おしっこ1回と口1回ならばなんとかなるかもしれない…。

 恵の思考は加速し、そして辿り着く。男が用意した場所に…。

 あの男のおしっこなら、もうすでに1回飲んでいる。今更それを拒否する理由もない。第一、精液を飲まされるのと何ほどの違いがあるというのか?

“よし。次は必ず飲む。”

 恵は未だ胸の奥深くで躊躇いを見せる自分にそう言い聞かせた。



 これからの方針を決め、気が緩んだのだろうか。恵が次に思い浮かべたのは、家族…二人の子供のことだった。

 金曜の夕方、スーパーで拉致されてからどれくらい経っただろう。ここにいると時間が分からないので、体感でしかないが、七日ほどだろうか?
もう随分会ってないように感じる。子供達が生まれてから二日以上顔を見なかったことなど無い。出張だって県外は極力避けてきた。上の子のピアノは土曜、日曜は下の子のスイミングだ。恵と同じく教師であり、部活の指導で土日もない夫に代わり、送り迎えはいつも自分がしていた。子供達はちゃんと習い事に行っただろうか…。

“きっと寂しがってるだろうな。”

 特に甘えん坊の下の男の子の顔が浮かんだ。

“ごめんね。お母さん、できるだけ早く帰れるように頑張るからね。”

 『やはり、まだ死ねない。子供を残しては絶対に』そう強く思う恵は、次にあの男がやって来た時のために、ベッドに横になり、お腹の減りを少しでも遅くし、体力を温存しなければと瞼を閉じたが、起きてからあまり時間が経っていないためか、気が昂ぶったためか、なかなか寝付けなかった。


 しかし、実はこの時、恵は気づくべきだったのだ。何日かぶりにやけに思考がクリアだったことに。体力が戻ったわけでもないのに寝れなかったことに。


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