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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ケッチャク-7


 この吸血蔦はオリジナルの吸血蔦をベースに、肉食植物ザルスの遺伝子を組み合わせたもの。
 株分けされたものは生き物の体内に潜り込み、宿主を生かしたまま養分を吸って成長する。
 更に種子での繁殖も可能で、その繁殖力は非常に強く、オリジナル同様、季節風に乗せて種を飛ばすであろう事をランスは神妙な表情で語る。

「飛ばされた種子は吸血蔦同様に宿主に寄生するでしょう。オリジナルと違う所は、寄生対象が死体でなく生き物という所です」

 例えば鳥が種子を食べ、その鳥を人間が食べれば人間を内側から突き破って発芽する。
 そして、今エザルに居るような巨大吸血蔦が世界に広がるのだ。

「これはあくまでも最悪の可能性ですが……」

「……高い確率で有る……という事ですね?」

 警備隊長の険しい顔に、ランスは深く頷いた。

「火は有効ですか?」

「いいえ。一度地面に根付いてしまったら、燃やしても地上に出ている分が消えるだけで球根は無傷です」

 地中を移動する球根の位置を把握するのは困難。
 ならば、地上に蔦が存在している方が位置が把握出来る分まだましだ。

「立ち寄った施設で強力な除草剤を作ってきました。これを球根の近い位置に注入出来れば根まで枯らせます」

 ランスはノアに合図して鞄を開けさせる。
 中には手の平に乗る大きさの瓶が30本は入っていた。

「どうしてここまで?」

 警備隊長はノアが差し出した鞄を受け取りつつ、素朴な疑問を口にした。
 エザル出身という訳でもなく、偶然居合わせただけの植物学者……エザルに恩があるでも無いし、普通の植物学者がエザルの為にわざわざ砂漠を往復した意味が分からない。

「植物学者として、この吸血蔦は非常に興味がありますし……これは世界の危機と言っても過言では無いでしょう?」

 ランスの言葉に警備隊長はふっと笑って頷いた。
 確かに、これが世界に広がれば世界の危機だし、エザルから発生したと分かれば下手したら世界に向けての宣戦布告だ。

「では。ありがたく使わせて頂きます」

「オレらも協力するっ」

 ランスを押し退けたテオは警備隊長に向かって手を上げる。

「ぜひ頼む」

 エザル警備隊は砂漠の民なので植物自体あまり知らない。



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