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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ケッチャク-5


 空に届くかと思う程高い緑色の幹、そこから伸びた同色の蔦は建物の間を縫うように四方に伸びていた。
 子供はしゃっくりをあげながらポカンとして緑色の物体を見上げる。

おおぉぉおおおぉぉぉ

 どこからともなく、低く響く声が子供の耳に届いた。
 その子供に、1本の蔦が横から忍び寄る。
 何かを探す様に動いていた蔦は、子供の位置を確認して1度動きを止めた。
 そして、距離を測るように伸び縮みした後、一気に子供に向かってその蔦を伸ばす。

「あっぶねっ!!」

「!!」

 子供という獲物を横取りしたのは筋骨逞しい男だった。
 男は子供を脇に抱え、ジャンプしてその場から逃げるが足首を蔦に絡め取られてしまう。

ジュッ

「うあっちぃ!!」

 蔦に捕まれた足首から蒸気が出て、猛烈な痛みに男は悲鳴を上げた。

「こなクソっ」

 それでも男は腰からショートソードを抜き、足首に絡みついた蔦に斬りつける。
 あっさりと斬り落とされた蔦は、濃い緑色の樹液を撒き散らしながらどこかへ引っ込んでしまった。

「あちっあちっ」

 男は子供を抱えたまま足を蹴り上げ、足首に絡みついて蒸気をあげている蔦を振り落とす。
 地面に落ちた蔦はぐにぐにと蠢いた後、動きを止めた。

「ふぅーっ、熱かったぁ……火傷みたいになったな……」

 男は自分の足首を見て顔をしかめる。
 服は焦げた様にボロボロになり、その下の肌は赤くなってカサカサに干からびていた。

(まるで水分を吸い取られた感じだ)

 眉を寄せて考えていると、何かが服をくいっと引っ張った。

「おお、悪い悪い。大丈夫だったか?」

 服を引っ張ったのは抱えたままだった子供。

「おじちゃん、ゴメン……ゴメンね?痛い?」

 自分のせいで怪我をしてしまった、と子供は泣きそうな顔で男の足首を見ていた。
 男は捲っていた服を戻し、子供を地面に立たせるとニカッと笑う。

「大丈夫だ!お兄ちゃんは強いからなっ!」

 お兄ちゃんの部分をことさら強調して言った男は、ぐしゃぐしゃっと子供の頭を撫でて自分も立ち上がった。

「さ。安全な場所まで連れてってやる。そこに母ちゃんも居るだろうよ」

「うん」

 差し出した男の大きな手を握った子供は、涙を拭いて男と同じようにニカッと笑う。



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