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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ケッチャク-3


「お話したでしょう?」

 お互いの秘密を暴露した時点で、リュディが何故両性具有になったとか、体内に植物を飼う羽目になったとか全て話した筈だ。

「いえいえ、秘密のお話とかでは無く……例えば貴女の故郷の事とか、普通の話です」

 気候はどうだとか、この季節に咲く花はどうだとか……そういう話。

「そうですね……そろそろ雪が溶け始めているかしら……」

「雪が積もるのですか?」

 ファンも北の方や火山頂では降るが、城周辺では降っても積もる事はない。

「ええ……寒い時期は雪像を作ったりもします……それメインのお祭りもありますよ」

 領地内で東西南北に分かれ、技術を競う。
 優勝地区には領主からご褒美が貰えるのだ。

「楽しそうですねえ」

「ええ……」

 リュディは故郷の雪景色を思い出し、ふんわりと微笑んだ。

「そろそろ春の強い風が吹きますね」

「季節の変わり目の風……ですね」

 一般的に季節風と呼ばれるそれは、四季が無いような地域でも強く吹き、1年の節目を表している。
 と、そこまで考えた2人はハタと気づいた。

「あの……ランス様……砂漠にも……季節風はあります……よね?」

「はい。リュディヴィーヌ……私も同じ事を考えていました」

 季節の変わり目に吹く強い風は、植物の種子を遠くに運ぶ。
 よって、季節風が吹く少し前に植物達は一斉に芽吹き、花を咲かせ、種をつける。
 そして、季節風に乗せて遠く遠くへと子孫を広げるのだ。

「大変っ」
「大変だっ!」

 2人は声を揃えて起き上がり、着るものもそこそこに部屋を飛び出す。

「ノア!直ぐにでも出発だ!季節風が吹く!」

 エザルに居る吸血蔦が……世界中に種を飛ばす。

―――――――――――

 そんな訳で一行は大急ぎでクラスタから出発し、3日でエザル近くまで辿り着いた。
 これも全て3日3晩不眠不休で飛び続けたピィのおかげだ。
 ピィは1週間位なら飲まず食わずでも平気らしい。
 実際、今もケロッとした顔で毛繕いなどしていた。
 一応、少しは負担を軽くしようと思って自力で飛べるパルはちょこちょこ自力で飛んでいたのだが……無駄だったかもしれない。



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